内容説明
「俺というものは、俺が考えている程、俺ではない。俺の代りに習慣や環境やが行動しているのだ」―。衰弱してゆくカメレオンをアパートで世話しながら、人間社会の現実と自己の乖離をみつめた中島敦の『かめれおん日記』。少女に教えを乞い自転車の練習をはじめた「わたし」。空襲にあっても深夜の月は皓々と車輪を照らす(石川淳『明月珠』)。敗戦の日の出来事をリアルな生命感覚で描いた島尾敏雄の『アスファルトと蜘蛛の子ら』。灰色の世界を突き抜けようとした人間の真摯さ。
著者等紹介
中島敦[ナカジマアツシ]
1909‐1942。東京・四谷生まれ。横浜高等女学校の教師を経て、1941年、南洋庁書記官としてパラオに赴任。42年に『山月記』『文字禍』で注目され、同年『光と風と夢』が芥川賞候補になるが喘息で死去
石川淳[イシカワジュン]
1899‐1987。東京・浅草生まれ。東京外国語学校卒業後、福岡高校の講師に。辞職後、1936年に『普賢』で芥川賞を受賞。戦後になると無頼派と呼ばれて活躍、晩年まで旺盛な創作活動をおこなった
島尾敏雄[シマオトシオ]
1917‐1986。横浜生まれ。1943年、九州大学を学徒出陣のため繰り上げ卒業し、海軍に入隊。奄美群島に特攻隊隊長として赴任し、待機中に終戦を迎える。島での戦争体験から『出孤島記』『出発は遂に訪れず』などの作品が生まれた。妻ミホとの生活を綴った『死の棘』で読売文学賞、日本文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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