• ポイントキャンペーン

百年文庫  19

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 197p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119013
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「僕は、あの、小説家になりたいと思っているんだ」―新聞配達をしながら廓に通う「私」は、遊女になって間もない純朴な娘と親しくなり、想いを伝えようとするが…(小山清『朴歯の下駄』)。刑務所に夫のある妓が客のひとりに惚れてしまう…雪景色が涙をさそう藤原審爾の『罪な女』。惚れた男との最後の宴、悲嘆にくれる花魁・吉里に、どうしてもいま会いたいと待ち続ける客が―。すれ違う男女が哀しみを織りなす広津柳浪の『今戸心中』。遊里を舞台にした切ない恋の物語。

著者等紹介

小山清[コヤマキヨシ]
1911‐1965。東京・浅草生まれ。職を転々としながら太宰治に師事、太宰の死後、注目されるようになる。1951年から3年連続芥川賞候補になるが、失語症や夫人の自殺など非運が続いた

藤原審爾[フジワラシンジ]
1921‐1984。東京・本郷生まれ。戦後発表した『秋津温泉』で注目され、1952年『罪な女』ほかで直木賞を受賞。純文学から各種娯楽小説にいたるまで、さまざまなジャンルで活躍した

広津柳浪[ヒロツリュウロウ]
1861‐1928。肥前・長崎生まれ。本名は直人。26歳で『女子参政蜃中楼』を発表し、文筆の道に入る。尾崎紅葉と知り合って硯友社に参加。社会の底辺に目を向けたその作品は、深刻小説とも悲惨小説とも呼ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

78
今回の「里」は故郷かと思いきや、遊里。遊里といえば、樋口一葉の「にごりゑ」が印象的なのでこの巻では様々な遊里小説を知る事になりました。「朴歯の下駄」はどんなに想い合っていても男が気づかず、決断に移すか、躊躇っている間に女は身の振り方を決めているというほろ苦さが跡を引く。あの時点で告白していれば、何か変わったのだろうか・・・。「罪な女」は大町と戯れあう内に愛するようになったお愛。しかし、夫は絶対、許さない。本当の事も言えずに去ろうとしても一目見たい。嗚咽を聞いても裸足でずんずんと去っていかなければならぬ辛さ2018/09/02

えみ

63
儚い刻を一夜の夢として楽しむ遊郭…夢を売る女たちと心を通わす男たちの切ない物語。その愛が本気であればあるほど心に深い傷を残す。わかっていながら愛することを止められない。別れても戻る場所を探している、3篇の短編を収録した『里』。百年文庫シリーズ第19弾。新入りの遊女と親しくなった男の想いがもどかしい、小山清の『朴歯の下駄』。真実の愛が愛のない生活に勝つことができない哀しさを知る、藤原審爾の『罪な女』。すれ違う男女の絆は命を費やす、広津柳浪の『今戸心中』。選択の過ちを後悔する行き止まりの愛が辛くて泣ける一冊。2023/01/15

風眠

61
何の足枷も無く、愛した人と生きられる自由。その自由が現代の私たちにはある。叶わなかったり、状況が許さないという場合はあっても、その気持ちは別の形で昇華させることもできる。好きじゃない相手に嫁がなくてもいいし、心中で死ななくてもいい。かつて、愛した人と生きて添い遂げることが叶わなかった時代があった。遊女だけでなく、一般の女性も結婚に関してはそうだったろう。体だけはくれてやる、けれど本当に愛する人は心の奥底に。その切なさに胸締め付けられても、どうにもできない現実。遊里ですれ違う男女の心。愛おしくて、哀しくて。2018/09/12

18
里っていうから、サトイモとか故郷とか緑あふれる人為的な自然環境かと思ったら、遊里だよ…。廓にしといて。騙されたわ。小山清の「朴歯の下駄」がよかった。きぬぎぬの洗面所で「顔を洗ってる間、袂が濡れないように両掌でつかんでいた」…すまん萌えた。でも妓が病気になったからって他の名代を買うとかねえわ…。そこは筋を通せよ主人公。飲みの肴に「眠ってばかりいる」というと「その妓はおまえにほれてんだ。よっぽどほれてなきゃ眠らねえ」…すまん萌えた。描写がいちいち萌え転がしに来るので、待ち受ける終わりとの落差が哀しいですね。2018/12/21

神太郎

16
里=故郷と思っていたので、遊里とは露知らず。いや、漢字に色々な意味合いがあるんですねと、思いました。彼女たちの生きる世界とは対照的な切なさが残る物語に引き込まれました。初めて読む作家さんたちばかりだったので楽しく読ませてもらいました。2014/02/24

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/688618
  • ご注意事項