百年文庫  16

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  • サイズ B6判/ページ数 177p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591118986
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

幼さの残る夜長姫は美しい笑顔に似ず、残忍きわまりない。「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ」―姫の魅力に抗しきれぬ若い匠の恐怖と憧れ(坂口安吾『夜長姫と耳男』)。名もなき衛士が三つの姫宮をさらって逃げた。突如巻きおこる疾風のようなロマンス(檀一雄『光る道』)。白粉の下に「男」を隠し「私」は街の奥へ分け入っていく。女装することで変容していく男の心理を描きだした谷崎潤一郎の『秘密』。エロティシズムと夢魔が交錯する、妖気に満ちた世界。

著者等紹介

坂口安吾[サカグチアンゴ]
1906‐1955。新潟市生まれ。本名は炳五(へいご)。1931年の『風博士』で注目される。戦後『堕落論』『白痴』などを発表、太宰治や織田作之助らとともに、独自の文学世界を展開した

檀一雄[ダンカズオ]
1912‐1976。山梨県生まれ。東大在学中に発表した『此家の性格』で認められる。1951年に『長恨歌』『真説 石川五右衛門』で直木賞受賞。死の前年まで書き継いだ『火宅の人』により、読売文学賞と日本文学大賞を受賞した

谷崎潤一郎[タニザキジュンイチロウ]
1886‐1965。東京・日本橋生まれ。1910年に発表した『刺青』が賞賛されて以降、半世紀あまりにわたって多くの名作を残す。初期は耽美的な作風で知られたが、次第に日本の伝統美へと回帰。海外での評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

97
「夜長姫と耳男」は既読。「光る道」は些細なかみ合わせから起こる身分違いの出会いは恋から愛に代わり、やがて意外な展開へ。どのようにも取れるラストが跡を引く。文章が可愛くも艶かしくて、読むたびに陶然としてしまう。「秘密」は女装で街を彷徨いていた時に嘗ての女と再会した男の話。目隠しプレイは確かに五感を研ぎ澄まして世界を把握しないと想像力を掻き立てられないのでエロいよな~。しかし、女の懇願を無視し、謎のままで楽しまず、正体を見極めては幻滅する男程、野暮な者はない。この男は一生、退屈に苛まれるだろうな。2018/08/24

コットン

85
坂口安吾、檀一雄、谷崎潤一郎の3人による短編集。百年文庫ということと谷崎目的で購入したが、坂口安吾の『夜長姫と耳男』が断然面白い!ダークサイドの夜長姫に対して耳男がとった行動はもっともなことだけれど、最後の一行:「オレはヒメを抱いたまま気を失って倒れてしまった。」が作品全体をきりりと引き締めている。百年文庫はカバーを外して装画を楽しめる特典あり。2015/09/28

えみ

63
妖姫、妖言、妖艶…ぞっとする妖しさに釘付け。読み出してしまったら、決して気を抜くことができない。どの話もまったく違うものなのにどの話にも同じように妖雲が漂う、3篇の短編を収録した『妖』。百年文庫シリーズ第16弾。姫の魅力それが狂気、冷酷無残に破壊されていく青年、坂口安吾の『夜長姫と耳男』。予想できない展開が衝撃、檀一雄の『光る道』。女装が引き出す悔恨と快楽の結末が妖異な、谷崎潤一郎の『秘密』。どこかで何かが間違っていることに気付かない怖さと、気付いたときの恐ろしさ。さすが文豪だけあって文章の運びが秀逸。2022/12/18

モモ

57
坂口安吾『夜長姫と耳男』夜長姫のために仏像を作ることになった耳男。兎のような耳と馬面をバカにされた場で起こる悲劇が、今後の話を暗鬱と想像させる。父でさえ驚く思考の持ち主の夜長姫と真っ向から向き合った耳男が下した決断。これは愛なのかも。檀一雄『光る道』火焚屋の小弥太が三の姫宮の求めに応じて姫と逃げる。姫にとって初めてふれる世界と破滅。なんとも。谷崎潤一郎『秘密』一人になるために部屋を借りた男。街に出かけ、かつて捨てた女と出会う。秘密にときめくも、分かったら興味をなくす身勝手な男。女に惑わされる男たちの話。2021/01/24

konoha

45
図書館を利用するなら、百年文庫を読まないと損、とつぶやいてる方がいて、知ったシリーズ。漢字1文字にまつわる近代文学の短編3作を収録。表紙も素敵で、文字も大きく、とても気に入ってます。巻末の「人と作品」も充実。妖は、坂口安吾「夜長姫と耳男」、檀一雄「光る道」、谷崎潤一郎「秘密」。夜長姫〜と光る道は少し似ている気がして、谷崎潤一郎の個性が際立った。光る道の風景の描写が美しく、印象的。近代文学は難しいけれど、それぞれの作家の文体の違いに触れるだけでも楽しい。少しずつ読んでいきたい。2021/05/20

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