内容説明
真面目一徹の田舎藩士・六左衛門は、連れていかれた吉原で遊びの面白さにハマり、金の価値を初めて知る。とめどない女遊びのツケは、やがて藩の金を流用するという事態にまで発展し…(「薬草の栽培法」)。星新一が遣した異色の時代小説集、ついに完結。
著者等紹介
星新一[ホシシンイチ]
1926年東京生まれ。東京大学農学部卒業。68年『妄想銀行』で第21回日本推理作家協会賞受賞。ショートショートの第一人者として1001本を超える作品を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
42
わたしの所有している文庫本の星新一さんの最期の本です。ただこれもほかの時代小説集と同じに「殿様の日」と「城のなかのひと」から採られたものですでに読んだ覚えがありました。ショートショートとはまた違った味が出ていて再読ですが楽しめました。また今まで未読の「祖父・小金井良精の記」を読むために古本屋で購入しました。2015/02/06
も
25
星新一さんの時代小説集完結編。「薬草の栽培法」では星さんらしい結末でしたが、「城のなかの人」はガラリと印象がかわりました。豊臣秀頼の視点で描かれた作品で、戦国ものの血生臭さのない淡々とした物語で、ぐいぐいと引き込まれました。時代小説集で星さんの新たな魅力を見つけました。2015/05/09
ワッツ
15
ショートショートの神様こと星新一が書く時代物である。星新一しか書けない独特の歴史小説であった。特に「城のなかの人」が秀逸で、豊臣秀頼の一生を描いているのだが、秀頼目線で終始淡々と進んでおり、星新一でなければ書けないと思う。戦国時代にありがちな豪快さが微塵もない。福島正則が出演していても、ペーソスしか流れない。後半二篇など特にそうだが、普通の歴史とは違う目線から描いているので、ハッとさせられるし見事だった。2013/03/31
ちゃこ
6
[全3巻]第3巻。 【収録作品 5編】「薬草の栽培法」「ああ吉良家の忠臣」「城のなかの人」「正雪と弟子」「はんぱもの維新」 /吉良家への討ち入り、豊臣秀頼と大坂城、由比正雪の乱、明治維新と有名な事変を扱った作品を集めた巻。これもまた他の作家にない視点で描かれていて面白かった。 /[2014ー128]2014/06/15
future4227
5
星新一の時代小説短編集完結編。今回も星新一独特の切り口が冴えわたる。『城のなかの人』では豊臣秀頼から見た戦国の世が語られていくが、そこでの秀頼は軟弱なイメージとは程遠い、極めて誠実な武将だ。むしろ同情すら感じてしまう。『はんぱもの維新』では幕末に数々の奉行を歴任した小栗上野介忠順が主人公。あまり聞かない名前だが、かなり凄い人っぽい。当時もっとも最先端の国家観を持っていた日本人かもしれない。この人を描いた長編小説はないかなぁ。2015/01/17