内容説明
“心の風邪”で休職中の男と、家族を亡くした傷を抱える女。海辺の町で、ふたりは出会った―。心にさわやかな風が吹きぬける、愛と再生の物語。第三回ポプラ社小説大賞特別賞受賞作。
著者等紹介
伊吹有喜[イブキユキ]
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。2008年『風待ちのひと』(『夏の終わりのトラヴィアータ』改題)で第三回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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taiko
135
仕事に疲れ、家族に疲れて心を病んだ哲司は、亡き母が最後に過ごした場所で、同じ年の喜美子と出会う。いつも明るく振る舞う喜美子には、家族を失ったという過去があった。……暖かく、優しいお話。以前手にした「四十九日のレシピ」とは違い、大人の恋愛模様も含まれていて、しっとりとした素敵な本でした。美鷲の岬の家や、景色が目に浮かぶようで、読み終わるのがもったいないような気持ちになりながら読み進めていた気がします。著者の本は2冊目。他のものも、是非読んでみたいと思っています。2016/01/14
hiace9000
127
思い描く人生を踏み外したエリート銀行マン哲司がふるさとの港町美鷲で出会った、おせっかいで無学なオバチャン喜美子。夫を亡くし息子も海で亡くした喜美子とのぎくしゃくしながらも、穏やかに過ごすひと夏の日々は、凝り固まった哲司の心と体をほぐし、喜美子の心にも新しい風を呼び込み始めるが…。 外見や相性、表層的なものに惹かれる若い恋から遠く離れた40歳の男女。来し方も、立場も、生い立ちも違う互いの心が解け合い、重なり合い、やがて繋がろうとするもどかしさと逡巡が丁寧に描かれる。風待つニ人、夏の終わり、いい風は吹くのかー2023/04/22
紫綺
117
思った以上に良かった。強いていえば恋愛物なんだけど、心にぐぐっと来る。心地よさが鳴り止まない。デビューしたてで未熟なせいか、多少、情景説明や時系列を捉えづらくなる時も有るが、全然気にならない。心に響き渡る素敵な作品、私にジャストフィット。ふくよかで温かい手、好きだぁ!!2011/06/12
みかん🍊
115
40手前大人の恋愛である、心の風邪をひいて亡き母の岬の家で静養するためにきた哲司と自称おせっかいおばさんの喜美子、二人が過ごした海辺の街の夏休み、どうなるのかハラハラしながらの読了、桐の箱に入ったメロンのような哲司とそこらに生っているキンコ瓜のような喜美子、たとえ大人になっても身分違いは感じてしまう、辛い過去を抱えてそれでも逞しく生きる喜美子には幸せになって欲しい。2017/06/23
おいしゃん
113
うつを患った主人公が、療養のため三重の実家へ戻り、不思議な女性ペコちゃんと出会い、少しずつ前向きになってゆくさまを描く。その過程では、とても共感し感情移入できるところもあれば、理解に苦しむ部分もあった。出来過ぎ感のあるラストだが、待っていたエピローグの2ページが、美しく明るい余韻を作り出してくれた。「道を踏み外したんじゃない。いい風が吹くまで、港で待機してるだけ」このひと言が、いまの自分に、最高に勇気をくれた。2015/08/21