ポプラ文庫
ゆれる

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  • サイズ 文庫判/ページ数 233p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784591104347
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

故郷である田舎町を嫌って都会へ出た奔放な弟・猛と、家業を継いで町に残った実直な兄・稔。対照的な生き方をしてきた二人の関係が、幼なじみだった智恵子の死をきっかけに揺らぎはじめる…。映画史に永く刻まれる傑作を監督自らが小説化。第20回三島由紀夫賞候補作。

著者等紹介

西川美和[ニシカワミワ]
1974年、広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中より日本映画の現場に助監督として参加し、是枝裕和監督等の作品に携わる。02年、『蛇イチゴ』でオリジナル脚本・監督デビューを果たす。06年に公開された長編第2作目『ゆれる』は、第61回毎日映画コンクール(日本映画大賞)、第58回読売文学賞(戯曲・シナリオ賞)をはじめ数々の賞を受賞するなど、映画史に永く刻まれる傑作として、高い評価を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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ケンイチミズバ

119
家業は子が引き継ぐもの、思考停止の呪縛、寂れた世界から逃げた弟、代わりに残らざるを得なかった兄。その親世代にも同じ事情、確執があり、皮肉にもそして偶然にも彼らが法廷に集う。公判前の打ち合わせを覆した被告、筋書きにない芝居を始める突然の展開。被告人も証人も弁護士も傍聴席もみな親族、被害者は幼馴染。なんとも狭い世界だ。少ない登場人物で古典的な悲劇が描かれる。嘘・恨み・妬み・悪意・裏切り・痴情、動機はいつも大体そのどれかだ。物語が法廷に移ってからはなかなか展開が面白くなる。それぞれの独白も羅生門のようだ。2019/12/13

あも

111
西川さんの小説から受ける怖さって何だろうと思っていたが、やっと分かった。共感ではなく共振。田舎町の渓谷にかかる一本の吊り橋を象徴に、ゆれる人々の独白を繋いでいく。都会で成功した弟と、田舎に縛られた兄。父親、幼馴染みの女性。強く見える人間が常に強靭か。弱い人間は本当に弱いのか。人の心の奥深さと多面性をそっと抉り出すように差し出されて、微細に揺らぐそれに自身の心もゆらされる。現実の状況や表層の感情が重ならなくても、自分の中の狡さや臆病さを見つめさせられる。だから彼女の紡ぐ物語はこんなに怖くて、少しだけ優しい。2018/06/17

菜穂子

76
読んでいて苦しくなってくるのは、田舎の生活の閉塞感。代々続く家を継ぐとは。親兄弟の呪縛…などなどをじわじわと肌で感じてきたからなのかもしれない。納得して自分らしい生き方を求めたり、乗り越えたつもりでも、一生の中でいつか暴発する日がくるかもしれないのだから。兄弟の確執を認めた父の世代、今目の前に突きつけられた子の世代。憎しみも愛情も、拗れつつも繋がっていることを確かに感じた時に初めてお互いを認めあえるのだろう。2019/08/06

ナミのママ

55
【原作週間@月イチ】イベントのテーマで選んでみました。映像作品は観ていません。表紙の吊り橋と緑が素敵で手に取ったのですが、読み終わるとタイトルとあわせて、なんともピッタリでした。都会に出た弟と、田舎に残った兄、法事で顔をあわせた時に起こった一人の女性の死。…ミステリーを読むことが多いので、いつもだと犯人探し、過去の事件、と解明されていくのですが、これはちょっと違った視点でした。一章ごとに登場人物の目線によって語られていく過去と現在。でもその心理は読者に解釈を任す、と思われる奥の深い良書でした。2015/04/19

たらお

44
再読。人のアンタッチャブルな仄暗さをあざとさなく表にさらす。こういう文章は、きっと意識の底深くまで潜って探り当てるだろうから相当気力も必要だろうし、ぴったりな表現を当てにいくこともきっと何度も読み直し書いたのであろうと思う。何よりも人の怖さを感じるときは、表を見て信じていたものの裏側が全く異なっているものだと知ったとき。羅生門形式のプロットは、事件に関わる兄弟の表と裏が痛いぐらいに描かれる。女性なのに隠れた男の妬みについて何故ここまで書けるのか?そして、映画での香川照之の引きつけられる演技を思い出す。2020/09/24

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