内容説明
作家、書店員、恩師、友人、恋人…生前近しかった13人による書き下ろしコラムと雑誌「幻想文学」に掲載されたブックレビュー7篇も特別収録。
目次
日記(二〇〇一年六月一三日~二〇〇三年四月二六日)
記憶―あの日、彼女と(空耳のこんにちは(雪雪)
教室の二階堂奥歯(鹿島徹)
エディトリアル・ワーカーとして(東雅夫)
二〇〇二年の夏衣(佐藤弓生)
六本脚の蝶から(津原泰水)
夏のなかの夏(西崎憲)
奥歯さんのこと(穂村弘)
主体と客体の狭間(高原英理)
最期の仕事(中野翠)
二階堂さんの思ひ出に添へて(高遠弘美)
夜曲(松本楽志)
ポッピンアイの祈り(石神茉莉)
旅(吉住哲))
特別収録 「幻想文学」ブックレビュー
著者等紹介
二階堂奥歯[ニカイドウオクバ]
1977年生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒。編集者、レビュアー。2003年4月26日、自らの意志でこの世を去る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YM
78
お気に入りさんの感想に魅かれて。タイトル:八本脚の蝶、作者:二階堂奥歯、手に取るには十分でした。編集者だった奥歯さんのブログをまとめた本。すごい読書家だったとか、エキセントリックな人だったとか断片的な印象だけで、語れる人ではなさそうです。奥歯さんが綴った、たくさんの言葉の渦に飲み込まれてしまいました。とても興味が湧いたので、奥歯さんが読んでた本や映画など、ちょっとずつ追いかけていくことにします。2014/12/13
中玉ケビン砂糖
66
彼女のブログがどのような経緯でこのような「書籍」というかたちをとるに至ったかは知らない。ただ、同じ大学の哲学研究会にかつて所属していたということを先輩が教えてくれたので、自分の頭の中の特別な一冊となった。塞いでいる日はひたすら哲学的思索にふけり、かと思えば、なんでもないことを楽しそうに綴るひとりの女性の日も。国書刊行会は「本の殿堂」だ。その末席に加わることが許された編集人としての彼女は、なぜ命を絶ったのだろう。日記の最後は、簡便な家族との対話で終わっていた。2014/11/15
傘緑
47
「何不自由なく満ち足りたこの世界で私はなぜだか戦場にいるような気がします…私の微笑みは自然に見えますか?口の中には恐怖の味がします」期せずして二階堂奥歯は先に行き、私たちは残された。私は彼女のとった行為を責める立場にはない。彼女が瞬間の幸福に飛んだのではなく、久遠の安らぎの中にあらんことを祈るばかりだ。ただこの言葉だけは呟かせて欲しい「さびしいね、さびしいよ」、これは笑いながら回転する壺の化け物と戦って倒れたゴルゴンゾーラ大王の勇姿を讃え、山尾悠子が送った草の冠。「罪なく他愛ないものこそが選ばれて滅びた」2016/12/17
メタボン
45
☆☆☆☆ 本を読み過ぎるとアブナイ方向に行って(逝って)しまう、と感性が鋭い高校生の時に思っていた。そして私の周りにも、未熟ながらも妖しく輝く文章を書く女子が複数存在していた。触れたら壊れてしまいそうな繊細な女子たちに私はどう対処すれば良いのか戸惑っていたことを思い出した。そして初めて知る魅惑的な芸術・伝説、アルマ・タデナ、ゴダイヴァ、シルヴィア・プラス、天野可淡など。誰かが書いていたが、確かにこの人がまだ存命だったならば、もっともっと多くの「珠玉」の作品達を広めてくれたはずなのに、残念で仕方ない。2020/12/07
nina
42
天才とは、みずからの不完全性を完全に認識した人間なのかもしれない、と別の本にさりげなく書かれた一節を読んで奥歯さんのことを思う。自死を選ばざるを得なかった彼女の純粋さ、抱えきれないほどの世界とその闇、そしてこちら側で生き続けることの恐怖は、不純な凡人のわたしには想像も出来ないが、愛されてもなお求めた「圧倒的な何か」を得られない焦燥感と淋しさのようなものは、彼女の綴った文章の端々から感じられ胸が痛んだ。わたしにとっては「圧倒的な何か」そのものである奥歯さんの、その軌跡を辿る新たな読書の旅がこれから始まる。2015/01/01