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出版社内容情報
子ぎつねが青くそまった四ほんのゆびで小さなまどをつくると、中に白い母ぎつねのすがたがうつりました。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
254
安房直子・文、織茂恭子・絵。これは絵本というよりは、創作童話に絵を付けたもの。物語の構造は異境訪問譚、中でもとりわけ「ウグイスの里」と似ているだろう。ただ、作品のあり方はずっと現代的であり、民話風の趣きを残しつつも新しいスタイルの幻想譚として成立している。そして、そこに在るのは、失われたものへのノスタルジーであり、同時に物質文明が喪失した何かへの希求である。文体もまた、こうした世界を構築するに相応しく、しっとりとした潤いを帯びつつ、静かに語られる。絵もまた、これに呼応して静謐を保ちつつ、物語に寄り添って⇒2025/05/15
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
167
あおという色は美しくて、あまりにも美しいからすこしこわくてさびしい。一面の青い桔梗、色映りしたように透き通る青い空、寝転んだら自分のからだまで色映りしそう。 わたしがきつねに窓をもらったら何が映るかな。遠くに暮らす両親や妹の姿とか映って楽しそうだったらすこし泣いちゃう。 すこしだけ手に入れられて、一度手に入れたからこそ喪ったことがより浮かび上がって、そのことばかり考えてしまうね。 最近さびしい本ばかり読んでいてせつない。秋だからかな。2019/08/31
ぶち
145
指で作った小さな窓から二度と会えないはずの人が見えるお話し。キキョウで染めた両手の指で小さな四角い窓を作れば見えるのです。子狐は、その窓からいつも母狐の姿を見ることができるから "もうさびしくなくなりました" と言うのです。若い猟師も一人ぼっちだったので子狐の小さな幸せに感激し、自分の鉄砲の代わりに指を染めてもらいました。これからは大切な人を身近に感じられる幸せを持つことができます、というハッピーエンドでは終わりません。母狐を撃たれた子狐の悲しみや喪失感をひしひしと感じる、なんとも切なく、苦しい結末です。2019/10/30
やま
134
きつねの窓 1977.04発行。字の大きさは…大。文は、安房直子さん。絵は、織茂恭子さんです。 母キツネを鉄砲で撃たれた子ギツネが、猟師とお話しする物語です。 この本を読み終って、えぇ…、これで終わり…。すぐ今度は、声を出して読んでみました。やはりこれで終わりなかと…。作者は、なにを言いたかったのか…? しばらくして、ふと。 二度と会うことが出来ないものと、会うことが出来るおまじないが有れば…。両の指で三角を作って、そこに何が見えるか見てみると…。あぁ、会いたい人が、夢が、希望が、思い出が見えてきます。2020/08/07
あも
98
【麻衣課題本】桔梗。花言葉は永遠の愛。風流というものを解さないにんげんなので、花を愛でる趣味はない。花を見ても名前は殆どわからない。それでもこの青さに目を奪われる。あおは孤独のいろ。ひとは孤独ないきもの。ときおり誰かとすれちがい、その誰かを大切な存在であると錯覚できる僥倖に心をなぐさめられながら、ひとりあるいていく。分け入っても分け入っても青い山。流浪の俳人、種田山頭火はそう詠んだ。あおいゆびで囲んだいびつな形をしたちいさな窓。覗きこんだその向こうに見えるまぼろしに愛というなまえをつけても、今日もひとり。2018/03/17