内容説明
サハリン2やユーコスの乗っとり。ロシア天然資源の再国有化。KGB閥による「レント(超過利益)」の独占。―この「レント」追求戦略の総支配人こそが、プーチンにほかならない。レント(超過利益)追求戦略の総支配人=プーチンの野望。
目次
プーチン論文
戦略の三本柱
外国資本の閉め出し
サハリン2の乗っとり
東シベリア・パイプライン―日中を天秤にかけ競争させる
小泉内閣の狙い―島の返還とからめる?
東シベリア・パイプライン―ロシアの逡巡と狙い
ウクライナにたいするガス供給の停止
政治的なバランス・シート
カスピ海のパイプライン戦争
EU、中央アジア、中国も参加
今後の課題
著者等紹介
木村汎[キムラヒロシ]
1936年京城(現ソウル)生まれ。京都大学法学部卒業後、コロンビア大学大学院に留学しPh.D.(哲学博士号)取得。北海道大学法学部教授、北海道大学スラブ研究センター教授・同センター長、国際日本文化研究センター教授、拓殖大学海外事情研究所教授を歴任。現在、北海道大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授、拓殖大学客員教授、東京新聞客員研究員。専攻は国際政治学(とくにソ連・ロシア研究)。主要編著書に『遠い隣国』(世界思想社、2002/アジア太平洋賞大賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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James Hayashi
28
08年初版。著者は国際政治学者。大国であり尚且つ資源にも恵まれ、資源の政策利用は当然といえよう。故に石油会社ユーコスを解体し再国有化。ガスプロムの持ち株も51%へ。プーチンの側近をトップにし政治、外交、安全保障の要としていた。大統領就任とともに原油価格の上昇があり急成長を遂げたロシア。予想では20年までに世界5大経済国家になっていたはずだが、石油価格の下落、他産業の育成ができず予想通りにはならず。親欧米のウクライナに対し忠犬を望むロシアはガスの元栓閉めを行うが、長期化は自分の首を締めることに。続く→2018/04/10
coolflat
5
本書は、サハリン2の権益をガスプロムに実質的に乗っ取られた話や、小泉政権下における東シベリアパイプラインの話、ウクライナのガス供給停止の話などを通して、プーチンのエネルギー戦略を知ろうというものだ。プーチンにとって、エネルギーは、政治、外交、安全保障の分野で重要な譲歩を引き出すことを可能にする重要な戦略資源だ。従って、エネルギー資源はロシア政府の手に集中させ、独占的に管理する必要があると力説する。プーチンのエネルギー戦略の狙いと手法を知る上で、特にサハリン2の章は必読。極めて分かりやすい形で示されている。2014/03/20
MAT-TUN
5
再読した。著名な国際政治学者である著者の木村先生の本ですから、専門書の部類に入ると思いますが、この本は普通に面白い。旧ソ連の時代には非効率な国家運営が故に、ソ連の持てるエネルギー資源は国家のパワーを政治的にも経済的にも支えるに足る運営は必ずしもなされていなかった。一方、新生ロシアにおいて、プーチンのエネルギー戦略が、東アジア、黒海周辺、ヨーロッパに向けてと、大きなスケールで繰り広げられており、うなるばかり。東アジア関連は日本とも縁が深く、今後の日露平和条約締結に向けての動きを鑑みると興味深い。2014/02/24