内容説明
カナダにおける近年の大きな労災補償法改革のうねりは、一九八〇年代後半から発生していた。この時期から始まる改革は、それまでに行われてきた制度の充実を図るための法改正とは明らかに異なるいくつかの側面を持っている。第一に、歴史的経緯の中で築かれてきた労災補償法の原則ないしは制度の構造自体に対して、制度疲労ともいうべき問題点が労使双方から指摘されたことに端を発している。第二に、職業病補償の拡大や精神疾患への補償など、法制度がいくつかの新たな問題に直面してきたことが影響を与えている。第三に、拡大する補償費用に対して、保険財政の将来性を危ぶむ声が、社会経済的な側面から見た法制度のあり方という視点を強調させ、制度の本来的な目的に回帰する改革の必要性についてコンセンサスを促す結果となった。第13回カナダ首相出版賞受賞。
目次
序編 カナダ労災補償法の現状と特徴
第1編 ブリティシュ・コロンビア州における労災補償法改革(ブリティシュ・コロンビア州法改革研究の視座;労災補償法の誕生と初期の発展;スローン王立委員会による法改革 ほか)
第2編 オンタリオ州における労災補償法改革(オンタリオ州法改革研究の視座;労災補償法の誕生と発展;ワイラー報告書による改革提案 ほか)
終編 カナダ法からの示唆
著者等紹介
品田充儀[シナダミツギ]
1957年長崎県に生まれる。1982年新潟大学法文学部法学科卒業。1989年神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得・退学。神戸市外国語大学専任講師、翌年より助教授。1997年カナダブリティシュ・コロンビア州立大学ロースクール客員研究員。現在、神戸市外国語大学教授(労働法・社会保障法)
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