出版社内容情報
病人を健康人から分別する、20世紀初頭より始まった病気という〈生命リスク〉を回避する医療戦略の構築を日欧比較のもとに検証。
内容説明
国家を担い手とし国民を広く包摂する医療保険の制度化、さらに医療の科学化と病院化による“病人”を“健康人”から分別するプロセスは、病気という“生命リスク”を回避する20世紀社会の医療戦略であった。この過程は産業化にともなう福祉国家の成立と軌を一にするものであったが、現代日本の医療制度改革にみられるように、こうした戦略は多くの面で綻びをみせはじめている。本書は、19世紀以降における疾病構造の変化、病院化の過程、オルタナティブ医療や精神疾患をめぐる事例を日独英の比較のもとに歴史的に検証し、さらには現代社会が共通に抱える高齢者のライフステージと生をめぐる新たな問題の発生・展開をも浮き彫りにする。
目次
序章 二〇世紀社会の生命と医療
第1章 リスク・パニックの二一世紀―新型インフルエンザを読み解く
第2章 近代日本における病床概念の意味転換―医療制度改革への歴史的アプローチ
第3章 明治期日本における看護婦の誕生―内務省令「看護婦規則」前史
第4章 治療の社会史的考察―滝野川健康調査(一九三八年)を中心に
第5章 世紀転換期ドイツにおける病気治療の多元性―ホメオパシー健康雑誌の記事を中心に
第6章 世紀転換期イギリスにおける「精神薄弱者問題」―上流・中流階級と「公」的管理
第7章 「危険な年齢」―ドイツにおける「更年期」をめぐるポリティクス
第8章 誰が「生きている」のか―痴呆・認知症・心神喪失
著者等紹介
川越修[カワゴエオサム]
1947年生まれ。現在、同志社大学経済学部教授。専攻はドイツ近現代社会史
鈴木晃仁[スズキアキヒト]
1963年生まれ。現在、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は医学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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