出版社内容情報
19世紀末以降から今日にいたる日欧の〈生命リスク〉を巡る諸問題を、生命の再生産とそこに派生する政策に的を絞り比較史的に検証。
内容説明
本書でいう“生命リスク”とは、新生児・乳幼児期、妊娠・出産、病気、加齢などを契機に顕在化する、生活・生存を不安定化させる身体をめぐる問題群とそれに対する社会の対応策を捉えるための仮説的な概念である。現代日本における少子化・高齢化問題は、この生命リスクを回避するための20世紀社会の戦略の行き詰まりを示す問題として捉えなおすことができる。本書は、19世紀末以降、今日にいたるまでの生命リスクをめぐる諸問題を、ドイツを参照軸にとりながら、妊娠・出産、乳幼児死亡といった生命の最生産とそこに派生する衛生政策、人口政策、家族政策などのさまざまなポリティクスに的を絞って比較史的に考察する。
目次
序章 生命リスクと二〇世紀社会
第1章 人口からみた生命リスク―近世・近代日本における花柳病罹患とその帰結
第2章 乳児死亡というリスク―第一次世界大戦前ドイツの乳児保護事業
第3章 農村における産育の「問題化」―一九三〇年代の愛育事業と習俗の攻防
第4章 戦時「人口政策」の再検討―「人口政策確立要綱」の歴史的位相
第5章 「生命のはじまり」をめぐるポリティクス―妊娠中絶と「胎児」
第6章 出産のリスク回避をめぐるポリティクス―「施設化」・「医療化」がもたらしたもの
第7章 生命リスクと近代家族―一九六〇・一九七〇年代の西ドイツ社会
著者等紹介
川越修[カワゴエオサム]
1947年生まれ。現在、同志社大学経済学部教授。専攻はドイツ近現代社会史
友部謙一[トモベケンイチ]
1960年生まれ。現在、大阪大学大学院経済学研究科教授。専攻は数量経済史・日本経済史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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