出版社内容情報
戦時中に中国にいた武田泰淳、堀田善衞、火野葦平、五味川純平は、敗戦間もない1950年代に戦争責任に向き合う作品を著した。『人間の條件』など戦争のおぞましさをあぶりだした作品は多くの人に読まれたが、日本社会が当事者意識をもって植民地への加害を争点化するのは1980年代以降である。なぜ数十年の時間を要したのか、彼らの作品を読み解きながら日本人の歴史認識をあらためて考察する。
【目次】
序章 「支配と加害」という課題
第一章 諸前提の確認:歴史的前提や一九五〇年代の議論状況
第1節 テーマの設定
第2節 関連する文学の先行研究
第3節 一九五〇年代の戦争認識─歴史学の先行研究
第4節 歴史的前提
第二章 痛み無き戦争体制の可視化:武田泰淳『風媒花』
第1節 武田泰淳と中国
第2節 『風媒花』と中国への思い
第3節 朝鮮戦争への加担とPD工場
第4節 『風媒花』が描き出した戦争体制の変化
第三章 侵略認識の射程:堀田善衞『時間』『夜の森』の視点
第1節 堀田善衞と中国
第2節 中国の「惨勝」と日本の「敗戦」
第3節 『時間』における南京事件の描き方
第4節 『時間』と『夜の森』、共通の課題
第四章 中国への再訪と錯綜する責任意識:火野葦平「史蹟」と『赤い国の旅人』
第1節 日中の民間外交と戦争の影
第2節 「兵隊作家」の読み直し
第3節 「史蹟」、植民地に絡め取られる人々
第4節 加害の地、中国との「再会」
第5節 撫順で出会った戦犯たち
第五章 「満洲国」における暴力と抵抗:五味川純平『人間の條件』
第1節 五味川純平と満洲
第2節 戦争を支える巨大産業と非合理的労働
第3節 『人間の條件』の基本事項
第4節 特殊工人、王享立とその手記
終章 支配と加害を描くこと
あとがき
人名・作品名索引、事項索引



