内容説明
なぜ彼らは殺され、故国を追われねばならなかったのか。それは「戦争のなかの偶発的な悲劇」ではなく、組織的・計画的に遂行された“目的”であった。混迷する中東情勢の原点となる戦争犯罪を問う。
目次
「疑わしい」民族浄化なのか?
ユダヤ人だけの国家を目指して
分割と破壊―国連決議一八一とその衝撃
マスタープランの仕上げ
民族浄化の青写真―ダレット計画
まやかしの戦争と現実の戦争―一九四八年五月
浄化作戦の激化―一九四八年六月~九月
任務完了―一九四八年一〇月~一九四九年一月
占領、そしてその醜悪な諸相
ナクバの記憶を抹殺する
ナクバの否定と「和平プロセス」
要塞国家イスラエル
著者等紹介
パペ,イラン[パペ,イラン] [Papp´e,Ilan]
1954年、イスラエル・ハイファ市生まれ。ハイファ大学講師を経て、現在、イギリス・エクセター大学教授、同大学パレスチナ研究所所長。イスラエル建国期のパレスチナ現代史を中心としたパレスチナ/イスラエル史研究。1984年に“Britain and the Arab‐Israeli Conflict,1948‐1951”で博士号取得。近年は、ヨルダン川西岸地区・ガザ地区の被占領地、イスラエル国内のアラブ・パレスチナ人、アラブ世界出身のユダヤ教徒(アラブ系ユダヤ人)に関する著作も相次いで出版している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
17
著者はイスラエル人の歴史研究者。1948年イスラエルの国家独立に伴い、パレスチナの民族浄化計画がどのような苛烈さでもって(組織的に)実施されたか、国連や欧米諸国はどのように関与したのかを詳らかにしている。2006年原著刊行後、著者はイスラエル国内で人身攻撃に晒され、イギリスの大学ヘ移らざるを得なかったそうだ。◇自国にとって都合の悪い歴史を「なかったこと」にしたい風潮はどこでも見受けられるが、過去に正面から対峙して、それを乗り越えて未来を構築していくためには、血の滲むような努力が必要なのだろう。2018/01/09
coolflat
16
3頁。ダレット計画。シオニストの方針は当初、1947年2月のパレスチナ人の攻撃に対する報復を根拠としていたが、翌年3月にはパレスチナ全土を民族的に浄化する構想へと変容した。ひとたび方針が決まると、任務は6ヶ月で完了した。すべてが終わった時、パレスチナに元から住んでいた人の半数以上、約80万人が追放され531の村が破壊され11の都市部が無人にされた。1948年3月10日に決定され、その後数ヶ月にわたって組織的に実行されたダレット計画は、今日の国際法では人道に対する罪とされる民族浄化作戦だったことは明らかだ。2024/04/04
belier
8
1948年イスラエル建国時、「土地なき民」ユダヤ人は「民なき土地」に帰還したとされていたが、実際にはパレスチナ人が住んでいて、虐殺や追放が行われたのだった。イスラエル人歴史家が自国の隠された歴史を当時の文献や関係者にもあたり詳細に調べ上げてまとめた記録。他の本などで「ナクバ」と呼ばれる迫害があったことは知っていたが、具体的な内容を読むと凄まじいもので衝撃を受けた。村を破壊した後に樹木を植えて、「不毛な砂漠地帯」を森林や公園に変えたのだとしてナクバを隠蔽したりもしたという。過ちは繰り返されるものなのか。2023/10/29
100名山
7
イスラエルはジェノサイドという言葉はユダヤ人に対してのみ使われるべきだと言っていた。なるほどと思った。 宗教はやはり隠れ蓑。 元凶は私の好きなビートルズを生んだイギリスであり、それを支援する同じく私が大好きなキャロルキング(東欧ユダヤ移民)のいるアメリカ。 パレスチナを歴史からも消し去ろうとするシオニスト。 虐殺を繰り返すイスラエルはつくづく酷い国だ。 ではアイヌ民族からアイヌモシリを奪ったの誰? 琉球王国を滅ぼし、戦場にし、軍事基地にしたのは誰だ。?2018/08/23
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5
「イスラエルが、パレスチナ民族の収奪に過去も未来も果たす大きな役割を認めないかぎり、そして民族浄化だと認識してその結果を受け入れないかぎり、イスラエル―パレスチナ紛争を解決するためのいかなる試みもかならず失敗する。〔…〕ところがシオニストはあいかわらず、「黒人」(アラブ)の世界に「白人」(西洋)の砦を築いて防衛することを目標に掲げてきた。パレスチナ人の帰還権を拒絶するのは、最終的にアラブ人に数で圧倒されるのではないかというイスラエル・ユダヤ人の恐怖心によるところが大きい。自分たちの砦が危機に瀕するかもしれ2023/12/20