内容説明
自由と平等を掲げつづけることの困難。増えるヨーロッパとイスラムの政治的・社会的軋轢。英独仏3か国による移民政策や受容と排除の現状を示し、アイデンティティを映す鏡としてヴェールを考察する。
目次
第1章 西欧におけるイスラムのヘッドスカーフ
第2章 共和国フランスにおける生徒のヘッドスカーフ
第3章 キリスト教的‐西洋的ドイツにおける教師のヘッドスカーフ
第4章 多文化主義国家イギリスにおける過激なヘッドスカーフ
第5章 リベラリズムとムスリムの統合
著者等紹介
ヨプケ,クリスチャン[ヨプケ,クリスチャン] [Joppke,Christian]
1959年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校博士(社会学)。南カリフォルニア大学助教授、欧州大学院大学教授、ブリティッシュ・コロンビア大学教授、ブレーメン国際大学教授、パリ・アメリカ大学教授などを経て、スイスのベルン大学教授
伊藤豊[イトウユタカ]
1967年高知県生まれ。山形大学人文学部教授(比較文化、文化交流史)
長谷川一年[ハセガワカズトシ]
1970年岡山県生まれ。島根大学法文学部准教授(政治思想史)
竹島博之[タケシマヒロユキ]
1972年北海道生まれ。東洋大学法学部教授(政治哲学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kadoyan
1
イスラムのヘッドスカーフを巡るフランス、ドイツ、イギリスでの論争をその国ごとの特徴を詳述。日本ではあまり考えられず、ヨーロッパでそんなことが社会問題になっていたことをそんなに注視していなかったので、前半の訳文のところは、意味をつかむのも苦労した。しかし、この問題が、異文化との共存、多文化への寛容とはどういうことなのかということについて、鋭い示唆をしているようにも思えた。過激組織の跋扈という事態が、さらに複雑にしているが、そのことも含め、この論争の解決の方向を見出すことが、一つのカギにも思えた。2016/02/19
れうしあ
0
ヴェール論争の舞台であるフランス、ドイツ、イギリスそれぞれの論点を取り上げる。フランスでは、国民統合のためにライシテが徹底されており、政治的象徴となりうるヴェールは公共の場において否定される。ドイツでは、フランスとは中立の定義が異なり、宗教に対して開かれた中立性が取られている。しかしドイツはキリスト教的伝統が国家の根底にあり、ナショナリズムとの衝突が起こる。イギリスでは、市民社会が国家の前提とされているため、個人の権利を重視する多文化主義であり、司法は判断を避け、ヴェールの処遇は個々の学校に委ねられた。2018/02/26