内容説明
サッチャーとブレアの時代の二十数年間に、イギリスは国内的にも国際的にも大きな変化を経験した。自由競争のもとで経済の活性化と成長が実現し、階級の壁は低まり、大学の数が倍増し、情報化も浸透し、消費社会となり旅行者が激増した。また、エスニック・マイノリティの数も増えて多民族・多文化社会が進行し、北アイルランド問題等でも新たな展開が見てとれる。そうした変化をイギリスの文学者たちは敏感に感知し、知的で洗練され、論争的でスケールの大きな、優れた文学性をもつ作品がつぎつぎと生み出されてきた。本書は、経済学と統計学に関する論考も含め、この間に著わされた小説や詩の作品群を社会・政治・文化・思想との関わりで論じる。
目次
1979年以降のイギリス社会と文化
第1部 サッチャーの研究(サッチャリズム―経済的自由の回復;ニュー・レフト・アローン―スチュアート・ホールとサッチャリズム;サッチャーのレトリックを計る―コーパスにもとづく通時的分析)
第2部 自由な社会と小説(1980年代時代精神の虚像―マーティン・エイミス『マネー』;愛こそはすべて―厄介な道徳家、イアン・マキューアン;サッチャーの時代とキャンパス・ノベル―デイヴィッド・ロッジとマルカム・ブラッドベリ;ポストコロニアル・ビルドゥングスロマン―ハニフ・クレイシ『郊外のブッダ』;愚かさの自覚と自由な生―カズオ・イシグロ『日の名残り』)
第3部 政治と詩人たち(あるエデン幻想の消滅―桂冠詩人が見たサッチャー時代;炭鉱の消えた丘―グレート・ストライキおよび以後のウェールズの詩/詞;サッチャリズムと北アイルランド詩)
著者等紹介
曽村充利[ソムラミツトシ]
法政大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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