出版社内容情報
1934年にナチス政権下の現ポーランド領に生まれ、「ドイツ人追放」により旧東独で育ち、作家デビューに伴い西ベルリンに「転居」、1984年にイギリスで孤独死したヨーンゾン。イデオロギーで分断された世界を対話的に描き、ブランショに称賛されるなど、戦後ドイツを代表する作家としての評価はいまだ揺るぎない。その文学的営為の根本的な「詩学」の問題は「対話性」や「倫理」という図式に回収されてきたが、本書は精緻なテクスト分析と大胆な批評性であえてそれらの「境界」を探り、彼の文学を貫く「真実への困難な探求」を新たな視点から描き出す。
目次
第1章 詩学
第2章 ダイアローグ
第3章 パフォーマンス
第4章 モダニティー
第5章 『ヤーコプについての推測』
第6章 『イースターの水』
第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』
結語
著者等紹介
金志成[キムチソン]
1987年大阪生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専攻は戦後・現代ドイツ文学。現在、早稲田大学文学学術院講師(任期付)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
8
「ヨーンゾンが確認するのは、詩学とは、その学という接尾辞が表すようにらひとつのディシプリンであるということだ。繰り返せば、詩学は文芸そのものではなく、それを規範づけるところの理論であり、作家の言葉を用いるならば、それは研究の管轄外にある。だが、ヨーンゾンは文芸についての研究者ではなく、文芸そのものを生業とするところの実作者である。それゆえ、自分はそもそも詩学を語る立場にいないのだ、と主張している…ヨーンゾンは詩学を拒絶している。あるいは…教科書のなかに存在するようだが、自分には関係ないものだと述べている」2021/06/16