出版社内容情報
東西冷戦期、福田恆存や江藤淳と似た「保守」の立場から活動したフランス文学者・文芸評論家、村松剛。小林秀雄との出会い、ヴァレリー研究、アイヒマン裁判の傍聴、アルジェリア戦争の取材、中東戦争への眼差し、内閣調査室への協力、三島由紀夫や遠藤周作らとの人的交流。その生涯を丹念に追い、いかにして議会制民主主義を尊ぶ保守派のリベラル知識人となったのかを記す、初の評伝的一冊。
内容説明
東西冷戦期、「保守」の立場から活動したフランス文学者・文芸評論家、村松剛(1929‐94)。その生涯を浩瀚な文献から丹念に辿り、人的交流の網目に布置し時代精神とともに犀利に描き出す、初の本格評伝。
目次
聖別リストにない名前
占領下の青春
小林秀雄
銃後の世代
ポール・ヴァレリー
メタフィジック批評とシュルレアリスム研究会
ソヴィエト連邦への疑心―ハンガリー事件
同人誌『批評』と六〇年安保闘争
アイヒマン裁判の傍聴
抵抗者への共感―アルジェリア戦争〔ほか〕
著者等紹介
神谷光信[カミヤミツノブ]
1960年横浜市生まれ。関東学院大学キリスト教と文化研究所客員研究員。昭和文学会会員。博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
95
左派が支配する戦後日本の論壇で、村松剛もその一人として出発した。しかしハンガリー事件でソ連に失望し、アイヒマン裁判傍聴を通じてイスラエルのシンパとなり、アルジェリア独立運動に関係して理想主義と現実政治の落差に幻滅することで立場を転換するプロセスが見えてくる。滞米体験や三島由紀夫との交友もあり、冷戦下に日本人はいかに生きるべきかを考えるモラリストへ変貌したのだ。それは村松だけでなく、主流派へ異議を唱えた保守系知識人に共通していた。イデオロギー第一の時代を知らぬ現代人は、当時が同じ日本とは信じられないだろう。2023/07/09
小谷野敦
6
村松剛の初の伝記。手紙や日記などは利用されておらず、遺族にも取材していないので、私的な細かいことは分からないが、イスラエルに対して、反共ということで村松が甘かったなど、対象を突き放した筆致は良かった。2023/04/01
れいまん
3
副題は保守派の昭和精神史となっている 村松剛という保守主義者を知らなかったので手に取ったもの 今は片山杜秀氏が詳しいようだ 戦前から、東大も左翼の牙城になっている状態から保守主義の変遷を知りたくて。 あまり良くわからなかった2023/07/21