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出版社内容情報
幻想とは何か。その所在の探求と明確な定義づけを試み,絵画,錬金術書・初期解剖学書の図版に及ぶ古今の資料を駆使して,象徴と寓意と謎のカオスに照明を当てる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
彩菜
18
幻想とは、例えば美しい女の衣からそっと覗く鳥の爪。ある秩序の中でこの法則に背反する、人間と動物や過去と未来の奇跡的混淆といった矛盾と不安の裂け目から幻想の毒は入り込む。それは単なる現実に第2の現実が接ぎ木されたよう、未だ予感されるだけの現実へ精神を導く。またそれは一つの謎、解き難き曖昧さ、解を探す夢想へ誘う。こうした曖昧さにより漸く守られる魂の切望の、その失望の世界があるのだ。語でも絵でも正確に語れぬ、ただ幻想、そのイメージでしか顕せぬ…。幻想とはそうした捕捉し難い実在を表象しているのではないのだろうか2021/01/31
misui
7
写実でなければあれもこれも式の拡散しがちな幻想観にまず異を唱えて、表現者の意図せざるもの、それが現実への闖入であり裏側からこの世界を襲うような表象を最も幻想的とカイヨワは定義しているようだ(よってコードさえわかれば容易に読み解けるようなものやあからさまに鬼面人を威すようなものは退けられる)。これは幻想へのある種の確信があるからこそ導かれる考え方で、カイヨワ初読ながらこの著者には信頼が置けると感じられた。2020/01/07