内容説明
精神的な生の世界としての“歴史的世界”の構造・発展・作用のダイナミズムを、ディルタイは概念的に究明すべく繊細な思索努力を積み重ねた―その軌跡と論理をたどり、「生きられる歴史的世界」のアクチュアリティと歴史的自己省察の可能性を「解釈学的理性批判」の視座から追究して、未完成交響曲でありオープン・システムであるディルタイ哲学の全体像を、明確なヴィジョンへと構築し直す。
目次
第1章 歴史の基底としての人間的生
第2章 歴史的ダイナミズムとして現象する人間的生
第3章 「表現」として現象する人間的生
第4章 歴史的世界の認識
第5章 人間的生の世界のカテゴリー論
第6章 「自己省察」としての哲学
第7章 歴史的世界の哲学的アポリア
終章 生きられる歴史的世界のヴィジョン
著者等紹介
塚本正明[ツカモトマサアキ]
1947年札幌市に生まれる。1971年京都大学文学部哲学科卒業。1976年京都大学大学院文学研究科(哲学専攻)博士課程単位取得。現在、奈良女子大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
8
「存在する」ことと「生きる」ことはちがう。哲学は長らく「存在」の問題を追求してきたが、ぼくらの関心は生、つまり現実的に活動して果てることにある。哲学を勉強しなかった自分には「存在とは何か」という問い自体の意味が理解できなかったが、今わかった。「存在」の問いは「生」から生じてくる。そこにあるものはなくなる。すべてのものは無に帰す。それを体験し反省した生命体だけがそこにあって決してなくならないものを探し始める。不老不死のロボットも死を意識しない動物も哲学いらない。死を忘れてるかぎり人間も哲学なしで生きられる。2021/03/22