内容説明
広大無辺の想像力の世界を四大元素をもとに分析したバシュラールの詩的想像力論を追跡・検討し、イマージュを“もの”と“人間”の出会う場として位置づけつつ、近代化=科学的思考によって失われた詩的想像力と自然・身体性の回復をめざす。科学的認識論をふまえた物質的想像力論により、詩学の根本概念を探る。前著『バシュラールの詩学』で展開した論考をさらに発展させた続編。
目次
第1部 想像力の理論(バシュラールの想像力理論の理解をめぐって;切断と連続―接木という概念装置をめぐって)
第2部 『瞬間の直観』を読む(瞬間;習慣の問題と不連続な時間;進歩の観念と不連続な時間の直観)
第3部 二つの詩学(シニフィアンの詩学覚書;沈黙の詩学覚書;バシュラールからセールへ―複雑系の哲学)
著者等紹介
及川馥[オイカワカオル]
1932年生。茨城大学名誉教授、愛国学園大学人間文化学部教授(2006年3月退職)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぽてと
2
金森修氏の解説書が若干科学哲学よりであるのに対し、こちらは詩学に重点を置いてバシュラールの思想を紹介している。また、第二章は、ベルクソンの「持続」を批判し、「瞬間」の優越を説いた『瞬間の直観』のほぼ全訳となっている。気になるのはバシュラールの進化論だ。彼は主に専門だった化学や工学を科学哲学の中心にしているのが、生物学にも関心があったという。彼の進化論は原子論的で不連続、目的を設定しないというネオ・ダーウィニズムに接近したもので、ベルクソンやその影響を受けたテイヤール・ド・シャルダンのそれとは対象的である。2016/07/07