目次
ユダヤ神秘主義の一般的特質
メルカーバー神秘主義とユダヤのグノーシス
中世におけるドイツのハシディズム
アブラハム・アブーラーフィアと預言者的カバラー
ゾーハル(書物とその著者;ゾーハルの神智学的教義)
イサアク・ルーリアとその学派
サバタイ主義と神秘主義的異端
ポーランドのハシディズム、ユダヤ神秘主義の終局
著者等紹介
ショーレム,ゲルショム[ショーレム,ゲルショム] [Scholem,Gershom]
1897‐1982。ベルリン生まれのイスラエルのユダヤ学者。ドイツの大学で数学・物理学・哲学を学ぶ。シオニズム青年運動のグループに加わりパレスチナへの道を志向。1923年以降はエルサレムに移住。1933‐65年エルサレムのヘブライ大学のユダヤ神秘主義及びカバラー学の教授。この分野の世界的権威。1958年ユダヤ研究にたいする「イスラエル賞」をはじめ、68‐74年イスラエル科学人文学アカデミー会長、75年以降西ベルリン芸術アカデミー会員等、数々の顕彰に輝いた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
54
旧約にも描れた神の玉座(メルカーバー)の観照から18世紀のハシディズムまで、カバラ発展の主段階の特徴を纏めた本。作者は最初にカバラがユダヤ民衆のなかで「成功をかちえ」てきたことを指摘しますが、1492年のスペイン王国のユダヤ追放でそれを「有効な」ものと解釈するルーリア学派が生れるといった流れから、古い伝統を「新たな仕方で解釈する」ことで生の不安や民族の困難に応えてきた、カバラ成功の秘密が窺えます。同時にゾーハルなどカバラを代表する体系とその繋がりが絢爛と纏められていて、折に触れ読み返したい本になりました。2021/03/09
マウリツィウス
9
【ヒエロニムス訳以降史-】ウルガタ訳聖書における欽定訳聖書意味、シェイクスピア古典主義を明晰対峙論考に見据えた論文集成世界、古代ユダヤ教タナク定本由来、「古典主義」をクラシックとした文壇ないし《文明史》呼称意味、ジョイス以降英文学到来の恣意的根拠は「古典主義システム」、つまりエーコ記号論『開かれた終り』は『メディア論』に連なる。ショーレムの限界追求領域は確かにバルト以降系譜に組込まれる。《古代》ユダヤ神秘主義はボルヘスにおけるアルゼンチン世界とラテンアメリカ神学におけるユダヤ教論考にも普遍連鎖へと導ける。2014/08/24
またの名
8
うっかり羊皮紙の聖なる祈祷の言葉を消してしまったので自罰として会堂の入り口に寝そべり信者が踏むと狂喜して感謝したアッコーのイサアクのように、神秘主義者が倒錯みたいになる現象のミステリー。カフカが恋人を経由してその発言に強く賛同した著者は、カバラやゾーハルからハシディズムに至る歴史を渉猟。神秘主義は「新たな脈動と新たな宗教的力とが古き宗教の枠を粉砕することなく、その枠をぶち破って全く新たな建築物を造り出すのではなくて、古き宗教の内部に留まって自己主張をしようとする時にこそ成立する。新たな宗教経験に相応した…2025/02/19
roughfractus02
6
エリアーデによれば、自然豊かな地に定住する印欧系部族が神を自己の内外に設定したのと異なり、砂漠を移動し遊牧生活を送るセム語系部族は神を徹底して世界の外部に設定したという。その宗教的神秘体験は、有限な自己の外の無限の神への合一という構造を採り、その知を離散する同族に伝達する手段は、口伝よりも書かれたものを中心に解釈学的な発展を遂げる。本書は、カバラー(伝承の意)の思想を中世にまとめられたゾハール、16世紀のルーリアらカバリストの大衆化運動に注目し、18世紀のハシディズムへ向かうユダヤ主義の精神の系譜を辿る。2021/09/05