出版社内容情報
被植民者,ユダヤ人,北アフリカ出身者という三重に屈折した人種差別を受けてきた個人的体験に密着し,現代社会における支配と隷属,抑圧と差別のメカニズムを抉る。
内容説明
屈折した人種差別を受けてきた著者が、個人的な体験に密着しながら、人種差別主義という普遍的な問題に分け入り、現代社会における支配と隷属、抑圧と差別の問題に冷静な展望を示す。
目次
1 記述(人種差別主義者の言説;観察;解釈;歴史の教訓)
2 定義
3 対処
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nranjen
3
図書館本。大急ぎで必要だったのに、最寄りではない公民館を受渡しに指定してしまい走り回るはめになった(反省涙)人種差別とは、差異に価値付けをし、それを暴力の正当性にするもの。しかし暴力がなければ人種差別ではないのか?差別は全体的(すべてそれに属するものを同一とみなす)絶対的(時間軸上。過去そうであれば今も未来もそうである)なものであるというのは納得。時間軸は見落としがちながら重要な要素だと思う。あと直接暴力をふるうもののみならず容認するものにも人種差別がある。アルベール・メンミ自体の位置付けが知りたい。2018/10/29
awe
2
人種主義の古典。差異そのものは存在する。その差異に価値付けをし、それに基づき攻撃を行うことが問題なのだという。また、差異があるから差別を行うというより、差別の正当化のために差異を見出す、或いは架空の差異をでっち上げるということが行われるのだ。本書では、文化的差異に基づく新たなレイシズムについては触れられていない。しかし、「現実の、あるいは架空の差異に一般的、決定的な価値付け」が行われているという点では、メンミの分析は通用するだろう。2018/07/24
Moxjet_Leech
2
人種差別に限らず、社会問題はどのように改善するか、という側面よりも情緒的な側面から語られることが多いと感じていた。その原因はこの本に書かれている「人種差別とは何か」という認識を共有できないまま議論を行っているからだと思った。この本では差別の解消についてはあまり触れていないが、その議論において人種差別の問題点を共有することができれば、解決への道筋を探る一助になると思った。2014/01/13
itsumiKshi
0
あれ? これ、いつの本? と思うくらいには現代でも身につまされる内容。しかもウィットが効いていて読みやすい。「この言説はその対象よりもそれを発言するものについてより多く教えてくれれるかもしれない」と冒頭にのべる、まさにそのとおり。2022/05/15