出版社内容情報
フロイトの原点に立ち返ってその精神分析理論を読み,幻想の起源と機能,性と幻想との関係を人間精神の一般理論として基礎づけつつ独自のフロイト解釈を提出する。
内容説明
大著『精神分析用語辞典』の共著者が、フロイトの著作の徹底的な読み込みとフロイト以後の精神分析学の成果をふまえて「幻想」と「性」の概念を軸に独自のフロイト解釈を提出する。「誘惑」「依託」「起源的幻想」というフロイトのキー概念を人間の原初における本質的・普遍的な構造と照合することによって鮮明に浮彫りにし、幻想の起源と機能、性と幻想との関係を幻想の一般理論として基礎づける試み。フロイトの原点に立ち返ってその思想形成過程を忠実に復元しつつ、精神分析理論の新たな発展の可能性をさぐる。
目次
第1章 「私は夜に訪れた」
第2章 「私の神経症理論はもはや信じられない」
第3章 「私は先史時代に関する著作を読む」
第4章 原「起源的」(Ur)
第5章 複数の入口を持つ脚本
第6章 「自己」(auto)の時―性の起源
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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22
ラカンから離反した優秀な弟子たちが、独自の道を探る最初の第一歩。向かったがまず「幻想」の概念であったのは興味深い。見たところその方向は、60年代のラカンの方向性と相反するものではなかったようだが。50年代後半に構造主義的なラカン理論が完成したのだとすると、ラカンの構造主義を批判しようとするこころみ(著者たちのものにかぎらず)が、いつも60年代以後のラカンの歩みと軌を一にしているように見えるのは皮肉。しかし本書で示唆されている方向は、かなり有望。最近翻訳が出たラプランシュの『精神分析の生と死』は名著である。2019/06/04
まあい
1
クィア系の論者(ベルサーニやバトラーなど)がときどき言及するラプランシュ。ラカンとはまた趣きの異なるフロイト読解だった。個人的な関心として、自体愛のプロセスを論じた箇所が興味深かった。主著『精神分析における生と死』を読みたい。2019/06/20
さえきかずひこ
0
1964年にラカンと袂を分かった二人によるフロイト理論の批判・再考・再解釈を行なった一冊。ほとんど専門的な知識が無いと読み進めるのが難しいだろうが、ある種の切実さが論文のそこここに溢れているので、勢いに乗って目を通すことができた。フロイトの人生自体が分析の対象となっていることが分かる解題も勉強になる。2011/10/06