内容説明
初期ダーウィンの進化のモデルは系統樹ではなく珊瑚(サンゴ)であった―初期のスケッチや覚え書きの分析を通してその事実に迫り、自然科学におけるイメージの意味、知の構築においてイメージが持ちうる可能性を掘り起こす超領域的ダーウィン研究。
目次
1 拾得物(一八三四年)
2 樹から珊瑚へ(一八三七年)
3 ストリックランドの対案(一八四〇年)
4 円環のスケッチからダイアグラムへ(一八五一‐一八五八年)
5 『種の起源』の図版(一八五九年)
6 珊瑚の博物学
7 進化と美の問題
著者等紹介
ブレーデカンプ,ホルスト[ブレーデカンプ,ホルスト][Bredekamp,Horst]
1947年生まれ。ベルリン・フンボルト大学教授(美術史)。2003年から学術雑誌『知のイメージ世界』の編者もつとめている
濱中春[ハマナカハル]
1969年生まれ。法政大学社会学部准教授(ドイツ文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
EnJoeToh
2
面白い。2012/03/04
毒モナカジャンボ
1
現代でも定説としてダーウィンの進化論の内容を簡潔に表象している「樹」のイメージ。だが実際にはダーウィンは別の表象を思い描いていた。それは珊瑚だ……という話。『種の起源』における、ダイアグラムと、文章中の樹の比喩が意味論的に異なることを指摘するところが肝だと思うが、別の著書でガリレオ以降の科学が新発見をめぐる競争的な性質を帯びるようになったことが指摘されていたのを思い出すと、ダーウィンがウォレスの樹モデルに焦りを感じて珊瑚モデルを放棄するシーンもまた印象的。図像学の射程の広さをまた実感した。2019/05/05
あかふく
1
進化というと樹のイメージが出てくるのはなぜか? 進化を示す図像が樹のようだと思われるからだ。しかしダーウィンはその樹のイメージを拒否し、むしろ珊瑚と重ねていたのだということを推測するのが本書。その珊瑚はまた、ブレーデカンプが専門とする16・17世紀にもつながるある「イメージ」に連なり、ダーウィンもその「イメージ」について語っていることが記されている。もう一点は、知について、言葉と図像のどちらで関わるかという違いについても示唆が述べられている(何故ダーウィンはダイアグラムに触れるとき樹を持ちださないのか)。2013/06/04
☆☆☆☆☆☆☆
0
進化論のダイアグラムをめぐる図像学。無限に複雑な対象をその対象の一部をもってイメージ化しようという、フラクタル的かつある意味では倒錯的な努力に強く興味を惹かれる。直訳調なのがちょっと残念かなぁ。2015/02/21