出版社内容情報
未開・古代社会に広く見られ、<犠牲>に多様な神力を与える<供犠>は、人間の<聖なるもの>への接近を媒介する儀礼である。本書はヒンドゥー教を中心に、ヘブライ、ギリシア、ローマ、アッシリアなど広く見られる供犠の事例を渉猟・分析して、その本質と機能を明らかにする。契約・贖い・罪と罰・贈与・自己犠牲・魂と不死などの観念も検討する。民族学の先駆的・古典的著作である。「若干の宗教現象分析への序論」を併載する。 <初版1983年>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
10
供犠を社会的機能として単純化すると、集団のために個人が犠牲になることを是とするように思える。が、供犠を行う祭司に注目する著者はこの儀礼で「お返しをもらう」個人の利益にも注目する。集団と個人、贈与と交換という著者の贈与論の萌芽が垣間見える本書では、両者の均衡を図る社会システムが念頭にあるようだ。ヘブライやアッシリア、ギリシャ・ローマの神話はその均衡を語る。が、歴史はその不均衡から戦争と虐殺が起こったと記す。機能から供犠の理解を促した古典とされる本書だが、その不均衡の只中に人間を置いたのだろう(1898刊)。2024/02/16
★★★★★
3
言わずと知れた?儀礼論の古典。1899年発表の論文で、当時モースもユベールも27歳くらい。って年下か! ヒンドゥーから始まり、ヘブライやメソポタミアまで引っ張ってくるすさまじい博覧強記っぷりに圧倒される一冊です。だけど、「(前略)供犠の機能がなんであるかを理解できるのである、それは社会的機能である(P109)」と結論付けてしまうストレートな機能主義的視点は、今の目から見ると容認しがたいなぁ。汲み尽くせる分だけ汲み尽くすべき一篇だと思いました。2010/10/04
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