出版社内容情報
神でありながら人間存在の標徴たる責苦と屈辱を強いられたプロメテウス??この特異な神格を詩的に照明しつつギリシア精神の営為を探り,神話の意味を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
人間側から描かれるアイスキュロス悲劇では、人間のために天から火を盗んだ罰として岩に縛られ、鳥達に肝臓を食われる苦痛を味わうプロメテウスは英雄とされる。が、この悲劇作者が参照したヘシオドス『神統記』のプロメテウスは、ゼウスを騙したり、弟エピメテウスが自然から身を守るものを動物に与えすぎ、仕方なく残った火を裸の人間に与える道化的な役割である。著者はこの兄弟を表裏一体とし、ゼウスの秩序に抗い、カオスを示唆するトリックスターと捉えた。その教訓は、神の贈与がカオスを起こすパンドラ(あらゆる贈り物の意)神話に表れる。2021/08/30
氷月
2
神でありながら人間らしい犯罪的行為によって人間の立場に身を置いたプロメテウス。動物が単に苦痛を苦しむだけであるのに対し、人間は不正当によっても苦しむ。運命についての知を有するプロメテウスですらも現下のこの苦しみについてはどうすることもできない。そして訪れる救済とは。2021/12/23
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