内容説明
「歴史」か「物語」か?武士団の世界観、東国ならではの恋物語、縁起や唱導の言葉の引用、頼朝と曽我兄弟の弟・五郎との熾烈な言葉の応酬などの言語的実験…中世東国のなんたるかを如実に体現した範例的・普遍的テクストであると言える真名本『曽我物語』。そしてなによりも「歴史テクスト」としての自らを押し出したのが真名本という物語ではないのか。一方、真名本と同じ事件を取材しながらも、まったくの反対方向を志向している『吾妻鏡』。幕府の公的年代記であるがゆえに『曽我物語』よりも、史料的価値が高く見積もられている『吾妻鏡』であるが、果たしてその優位性は正しいのか。歴史テクストを歴史たらしめる言葉の構造とは何なのか。真名本『曽我物語』と『吾妻鏡』という二つの作品の関係論、また『金槐和歌集』や『新古今和歌集』、『神道集』、『太平記』などさまざまなテクストを比較することにより、鎌倉時代における文学の言語空間について考察する。
目次
鎌倉幕府の文学論は成立可能か!?
第1部 「法」と自爆テロ(真名本『曽我物語』入門;曽我御霊神の誕生;大将軍源頼朝の誕生;鎌倉幕府創世神話;補遺・東国テクストの表現構造)
第2部 歴史への欲望(真名本『曽我物語』という歴史テクスト;平安朝物語文学と真名本『曽我物語』;『吾妻鏡』/真名本『曽我物語』)
第3部 真名本『曽我物語』とその周縁(「曽我語り」「唱導」の問題;仮名本『曽我物語』という「物語」)
著者等紹介
神田龍身[カンダタツミ]
学習院大学名誉教授。東京実業高等学校非常勤講師。早稲田大学大学院文学研究科博士課程後期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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