内容説明
『痴人の愛』『春琴抄』…華麗な物語世界を通して谷崎が描きたかったのはしたたかに生きぬく女たちの“生きる力”だった。人間の生を衰弱させる近代という時代のなか、耽美主義だけではない、新しい谷崎像を提示する。
目次
第1部 見出される生命(生命としての美―停滞からの脱出;騒擾と闇の間―ちりばめられる遊戯性と『秘密』;“自然”の牽引―『痴人の愛』『吉野葛』における魅惑の在り処)
第2部 相対化される近代(異性愛への疑念―『蓼喰ふ虫』『卍』における性愛の形;“手ざわり”のなかの関係―“盲目”を描く世界;溶け合う“大阪”と“京都”―『蘆刈』と日本文化への眼差し)
第3部 “滅び”に向きあって(“病”と“戦争”の時空―『細雪』の寓意的表象;失われ、連続するもの―“母”の表象と戦後社会;老いに抗う性―『鍵』『瘋癩老人日記』と生命への希求)
著者等紹介
柴田勝二[シバタショウジ]
1956年兵庫県生まれ。大阪大学大学院(芸術学)博士後期課程単位修得退学。大阪大学博士(文学)。現在、東京外国語大学名誉教授、梅光学院大学特任教授(日本文学)。思想・歴史への視座を取り込みつつ明治から現代にわたる近現代文学の研究・評論を幅広くおこなっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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