内容説明
五万字以上もある楷書の字形が、乱れることなく現代まで保たれ続けているのはなぜか―。類似する楷書を広く弁別するために編纂された典籍「字様」。字書とは異なる性格・構成をもつそれは、科挙制度とも深く結びつきながら楷書字形のあるべき姿を決めていった。筆者の発見した典籍『正名要録』『群書新定字様』の精査から浮かんでくる「字様」という概念を紹介する。また『説文解字』の検討により、楷書の歴史を整理し、字体の規定の有り様を明らかにするとともに、「楷書」という東アジア漢字文化圏を支える文字体系の解明を目指す。
目次
1 一九七〇年代までの研究状況
2 新資料の出現 1
3 『干禄字書』と『五経文字』は字様である
4 隋・唐代の弁似体系と字様
5 新資料の出現 2
6 『干禄字書』の威力
7 石経が採用される理由
8 開成石経と『五経文字』
9 『正名要録』と『顔氏家訓』
10 俗体とは何か―顔元孫と俗体の成立
11 開成石経と唐玄度撰『新加九経字様』―石経字形はどのようにして決められたか
12 文宗の最後
13 唐代楷書字体規範からみた『龍龕手鏡』
14 異体字同定上の問題点
15 楷書の秘密
著者等紹介
西原一幸[ニシハラカズユキ]
1947年生まれ。金城学院大学名誉教授。専門は中国・日本の古代辞書(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。