内容説明
十六世紀に日本にもたらされたキリスト教とヨーロッパの文化・思想は、既存の文化や思想にどのようなインパクトをもたらしたのか。日本のキリシタン禁制はどのように始まり、どのように終わったのか。中国や朝鮮、東南アジアの布教はどのように展開し、日本布教とどう関わったのか。東アジア世界におけるキリシタンをめぐる異文化の融合と摩擦の問題を、内外の一次史料を用いて日本史・東洋史・西洋史・科学史・思想史・言語学の各方面から検討し、中世末期から近世期の新たな時代像の構築を目指す。
目次
1 キリシタンの文化と思想(キリシタンと時計伝来;信徒国字文書のキリシタン用語―「ぱすとる」(羊飼い)を起点として
日本のキリスト教迫害下における「偽装」理論の神学的源泉
[史料紹介]「キリシタンと時計伝来」関連史料)
2 日本を取り巻くキリシタン世界(布教保護権から布教聖省へ―バチカンの日本司教増置計画をめぐって;ラーンサーン王国に至る布教の道―イエズス会日本管区による東南アジア事業の一幕;パリ外国宣教会によるキリシタン「発見」の予見―琉球・朝鮮・ベトナム・中国における日本再布教への布石;[史料紹介]南欧文書館に眠るセバスティアン・ヴィエイラ関係文書―所蔵の整理とプロクラドール研究の展望)
3 キリシタン禁制の起点と終点(最初の禁教令―永禄八年正親町天皇の京都追放令をめぐって;潜伏キリシタンの明治維新;長崎地方におけるカトリック信徒・非カトリック信徒関係の諸相―『日本習俗に関するロケーニュ師の手記』(一八八〇年頃)を中心に)