内容説明
災いや病の原因を探り、まじないや呪術で不祥を避ける…生きる上での普遍的な課題に対する知恵であり、人々の生活に密接に関わる文化であった陰陽道。朝廷や幕府など各時代の権力者と密接に結び付きつつも、地方や民衆間にも広く伝播し、日本文化史に大きな影響を与えた陰陽道はどのように発展していったのか。呪術として、学術として、また東アジアにおける位置付けなど、多角的な視点により、深化、活性化していく陰陽道史研究の動向を追う。
目次
序論 陰陽道研究の展望―その性格と概念をめぐって
総論・中世仮名暦と『〓〓内伝』―陰陽道概念の近世的展開によせて
1 呪術としての陰陽道(陰陽道の呪術と民俗信仰との繋がり―まじない呪盤書をもとに;『〓〓内伝』と祇園社―その関係性と影響について ほか)
2 学術としての陰陽道(陰陽師による天文道・暦道の兼帯について;平安時代の陰陽師説話―『今昔物語集』の晴明のまじないの前後 ほか)
3 東アジアという視点(「東アジアという視点」から考える陰陽道;唐の李淳風の『乙巳占』 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
65
陰陽道は日本で成立、が今の定説なんですね。中国の術数文化の影響は当然あるけれど。 地震も陰陽師の境域 良い地震(天下安泰の予兆)というのもあったのが面白い。 宿曜経は西洋の星占いと同ルーツ、ちょっとがっかり2023/06/11
もるーのれ
4
陰陽道に関する論集で、令和の段階での研究の集大成と言える。時代は古代から近世まで多岐に亘っており、奥深い世界だった。陰陽「道」という概念は東アジア世界の影響を受けて日本列島で成立したものとされる。中世・近世では、暦や呪術の知識が多様な媒介を通じて流布しており、陰陽道の元締めである賀茂氏・安倍氏の与り知らないものも多かったというのが興味深い。また、多様な呪符のあり方を知れて、考古学での遺物の解釈での参考にもなりそう。2025/05/24
霹靂火 雷公
3
取り急ぎ、『暦林問答集』に関連して中世までの『簠簋』・天文暦道の最新知見を中心に眺めた。令和の陰陽道研究の一里塚として今後も振り返る価値のある一冊。 いつか『新陰陽道叢書』も入手したいですね。(欲望)2023/01/30