内容説明
産むこと・産まないことは誰が決めるのか?現在、アジアの様々な地域の出産において、「生命を救うため」ではなく、「生命を選ぶため」に、生殖技術、出生前検査、人工妊娠中絶などのテクノロジーが用いられている。そして、代理出産や卵子提供といった生殖ツーリズムが巨大でグローバルなマーケットになっている。その問題点や課題は何か。また、出産をめぐるシステム、マタニティ政策は、国・地域、法制度、宗教、歴史、文化によってどのような差異・共通点をもつのか。テクノロジーの利用から産後の養生の現在まで、変容するアジアの出産の最前線を捉える。
目次
1 テクノロジー―出生前検査・生殖技術・人工妊娠中絶(アジアにおける出生前検査と障害観―ベトナム、ミャンマー、フィリピン調査から;生命リスク回避の「テクノロジー」と優生願望―中国・台湾の出生前検査を事例に;アジアの不妊への対処と非血縁的親子関係―ベトナム、ミャンマー、フィリピンの第三者が関わる生殖医療と養子縁組に関するインタビューより;南アジア地域における中絶と日常的倫理―法・生命観・実践)
2 マタニティ政策―母子保健・妊娠・出産・育児(出産環境を選ぶということ―日本;アジアの少子社会・日本と男性の産育参加;ネパールにおけるリプロダクション政策と母性観の変容;インドネシアの三十年間のマタニティ政策をふりかえって―ドゥクンとビダンの一九八九年~二〇一九年)