内容説明
歴史を中心に地方のあり方を描き出す総合的書物、「地方史誌」。これまでの研究では記載内容が参照されるだけで、「地方史誌」それ自体の総合的検討はなされてこなかった。しかし、世界に目を向けてみれば、各地の文化・集団に寄り添う「地方史誌」は歴史叙述・歴史認識に結びつきその比較検討は世界史的な課題と言える。本書では、世界各地の「地方史誌」における叙述の主体、また、対象となる場や事柄、さらには近代に至るまでの受容の諸相を考察し、「地方史誌」を比較検討するための礎を提示する。
目次
1 「地方」とはどこか(前近代アラビア語圏における歴史Ta’r ̄ikhと地誌Khi〓a〓―エジプトにおけるその展開;13~14世紀イルハン朝期イラン「地方史」少考―モンゴルの支配は地方からどう見えたか;「ビザンティン・コモンウェルス」と中世バルカン半島の知識人―文化伝播における中央・地方の関係を中心に;日本中世における「地方史誌」の可能性―『峯相記』を中心に;「邪馬臺国」と「邪馬一国」『大明一統志』日本国の条の史料源と明中期の学術)
2 「地方」の何を描くのか(『テュルク系譜』3写本に増補されたクリミアのハンたちに関する記述について―付クリミア・ハン国史書簡介;八代市立博物館未来の森ミュージアム蔵『八代名所集』について;政治環境と清代・大同における志書の編纂;朝鮮後期における邑誌編纂事業の概観;近世ベトナム王朝の地方誌に見る知識人の世界観―『興化処風土録』から『興化記略』へ)
3 「地方史誌」の向かう先(18世紀後半~19世紀初頭に成立したベトナム北部山地関連史料について―『諒山団城図』・『高平実録』を中心に;オスマン帝国における「一統」の在り方―『国家年鑑』と『州年鑑』;近代移行期中央アジアにおける歴史叙述の転換―ユースポフ『歴史』を中心に)
著者等紹介
小二田章[コニタアキラ]
1979年生まれ。放送大学人間と文化コース准教授。専門は近世中国史、宋代以降の地方志編纂、東アジアの地方史誌(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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