出版社内容情報
植民地化とはキリスト教化で、それが文明開化だと西洋人は思い込んだ。その見方に疑義を呈したハーンは米英で黙殺された。
戦後の東大英文科の秀才も、米英本国でのハーン低評価を当然視し、彼の文章の何が貴重なのかわからずにいた。
灯台もと暗しとはこの事か。
フランス領西インド諸島ではキリスト教化されたはずだったが黒人奴隷の子孫は、幽霊や怪談を信じている。クレオールの言葉を習い、それに気づいたハーンは、日本でも仏教以前や文明開化以前の大和島根に固有の神々は生きているはずだと予想して来日し、出雲でも怪談に耳をすまし日本人の霊の世界に入りこもうとした。そのハーンが描く明治日本ははたして真実か。それとも美化された幻影か。問題は、それをイリュージョンとして斥けたい、強い衝動に駆られる知識層が、日本には今もいるということではあるまいか。
和辻哲郎文化賞受賞。
小泉八雲と神々の世界
まえがき
第一章 小泉八雲と神々の世界
第二章 小泉八雲と母性への回帰
第三章 日本の女とアメリカの女
第四章 ハーンのロンドン体験
第五章 ハーンとケーベルの奇妙な関係
第六章 文学と国際世論
第七章 ハーンの「祖国への回帰」
あとがき
人間を東西の歴史と文化全体から捉えようとした傑作 遠田勝
ラフカディオ・ハーン―植民地化・キリスト教化・文明開化
まえがき
第?部 植民地化・キリスト教化・文明開化
第一章 ハーンが読んだラバ神父の『マルティニーク紀行』
1 ハーン復活
2 ラバ神父植民地へ行く
3 キリスト教文明本位の見方
4 ハーンという例外者
5 マルティニーク島と日本列島
6 ラバ神父の『マルティニーク紀行』
7 迷信と迷信退治
8 内外におけるハーン評価の落差が意味するもの
第二章 クレオール民話が世に出た経緯
1 『クレオール民話』第一集
2 『クレオール民話』第二集
付 『クレオールの民話』より
第三章 小泉八雲の民話『雪女』と西川満の民話『蜆の女』の里帰り
1 Globalization と表裏をなす Creolization
2 文化的中心と文化的周辺の関係
3 フランス領西インド諸島の場合
4 広義のクレオリゼーションとしての雑種文化
5 マルティニークと日本の並行関係
6 西川満と台湾の場合
7 『怪談』の「雪女」
8 『華麗島民話集』の「蜆の女」
9 日系台湾人の手になる記録
第?部 語り続ける母
第四章 ギリシャ人の母は日本研究者ハーンにとって何を意味したか
1 母子関係
2 母のイメージ
3 ギリシャとの比較
4 ハーンにとっての神道
5 前キリスト教的としての古代
6 ギリシャ人の母
第五章 カリブの女
1 来日以前の二小説
2 『ユーマ』の特色
3 『風と共に去りぬ』との比較
4 母なる人の意味
5 人間としての連帯
第六章 鏡の中の母
1 博多にて
2 鏡?霊的なるもの
3 松山鏡
4 ジェイムズ夫人
5 鏡に映る面影は誰か
6 伝統的解釈とシリリアの解釈
7 現在は過去の影
8 西田幾多郎の解釈
9 母の形見
第七章 ハーンと九州―外国人の心をいかに探るか
1 松江と熊本
2 作文というアプローチ
3 『クオレ』を模して
4 貞女アルケスティス
5 良き外国理解者とは誰か
第?部 比較の有効性について―方法論的反省
第八章 ハーンの『草ひばり』と漱石の『文鳥』
1 伝記的背景
2 方法論的対立
3 『草ひばり』
4 『文鳥』
5 共通点と異質点
6 出発点としてのエクスプリカシオン
註
あとがき―植民地主義以後の視点から
年譜と主要作品
附録 ユーマ Youma
異文化接触を読み解くキーパーソンとして―豊子?とハーン 西槇偉
グラン・メートル平川?弘教授との出会い ルイ=ソロ・マルティネル
あとがき―ハーン研究と和辻賞のこと 平川?弘
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)関係索引
平川?弘[ヒラカワスケヒロ]
著・文・その他
内容説明
フランス領西インド諸島ではキリスト教化されたはずだったが黒人奴隷の子孫は、幽霊や怪談を信じている。クレオールの言葉を習い、それに気づいたハーンは、日本でも仏教以前や文明開化以前の、大和島根に固有の神々は生きているはずだと予想して来日し、出雲でも怪談に耳をすまし日本人の霊の世界に入りこもうとした。そのハーンが描く明治日本ははたして真実か。それとも美化された幻影か。問題は、それをイリュージョンとして斥けたい、強い衝動に駆られる知識層が、日本には今もいるということではあるまいか。和辻哲郎文化賞受賞。
目次
小泉八雲と神々の世界(小泉八雲と神々の世界;小泉八雲と母性への回帰;日本の女とアメリカの女 ほか)
ラフカディオ・ハーン―植民地化・キリスト教化・文明開化(植民地化・キリスト教化・文明開化;語り続ける母;比較の有効性について―方法論的反省)
附録 ユーマ
著者等紹介
平川祐弘[ヒラカワスケヒロ]
1931(昭和6)年生まれ。東京大学名誉教授。比較文化史家。第一高等学校一年を経て東京大学教養学部教養学科卒業。仏、独、英、伊に留学し、東京大学教養学部に勤務。1992年定年退官。その前後、北米、フランス、中国、台湾などでも教壇に立つ。ダンテ『神曲』の翻訳で河出文化賞(1967年)、『小泉八雲―西洋脱出の夢』『東の橘 西のオレンジ』でサントリー学芸賞(1981年)、マンゾーニ『いいなづけ』の翻訳で読売文学賞(1991年)、鴎外・漱石・諭吉などの明治日本の研究で明治村賞(1998年)、『ラフカディオ・ハーン―植民地化・キリスト教化・文明開化』で和辻哲郎文学賞(2005年)、『アーサー・ウェイリー―『源氏物語』の翻訳者』で日本エッセイスト・クラブ賞(2009年)、『西洋人の神道観―日本人のアイデンティティーを求めて』で蓮如賞(2015年)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。