内容説明
『万葉集』をはじめ、日本の古典籍には「―集」という標題をもつ書物が大量にある。短い作品や断片(Fragment)を集成し、一つの著作や集(Collection)にまとめる手法は、日本文化の特筆すべき編成原理であるといえる。この類聚・編纂という行為は、一方では知を切り出し断片化していくことと表裏を為す。すなわち「断片」と「集」の相互連環が新たな知の体系を不断に創り出していくのである。古代から近代にわたる知の再生産の営みに着目し、日本文化の特質を炙り出す。
目次
1 断片から集へ―再構成される時空(「日記」と「歌」―平安仮名日記の「集」と「断片」;断片としての集―『和漢朗詠集』をめぐって;断片の集積体―「古筆手鑑」という存在 ほか)
2 体系化される「知」―百科思想と類聚編纂(知識の整理と形体化―比較論的観点から;日本中世禅僧による日本漢詩のアンソロジー;近世日本の百科思想の芽生え―和漢三才図会の構成と出典の一考察 ほか)
3 断片のディスクール―きれはしに宿るもの(百首歌を詠む内親王たち―式子内親王と月花門院;『建礼門院右京大夫集』における断片―題詠歌群の機能;断片としての「文」―西鶴と書簡体物語 ほか)