内容説明
貧困、格差社会、ニート・ワーキングプア…。新しい共感をあつめているプロレタリア文学の名作を厳選。「いま」の労働状況を映しだす17の普遍的名作、その名文・名ゼリフに詳しい解説、著者紹介をくわえた、究極のプロレタリア文学ガイド。
目次
「貧困」との遭遇―宮本百合子『貧しき人々の群』
歩く社会主義―宮地嘉六『放浪者富蔵』
曲芸のような、われわれの生―小川未明『空中の芸当』
偶然の出会いに未来を賭ける―葉山嘉樹『淫売婦』
万人によって作られる詩―葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』
下級船員の、国際性に根ざした自負と誇り―葉山嘉樹『海に生くる人々』
祖母の遺産は「百円」だった―若杉鳥子『棄てる金』
貧しい農民同士が殺しあう戦争の理不尽と狂気―黒島伝治『橇』
そこに交番が立っていた―中野重治『交番前』
対等に誰かと話してみたい―佐多稲子『女店員とストライキ』〔ほか〕
著者等紹介
楜沢健[クルミサワケン]
1966年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学ほか非常勤講師。早稲田大学第一文学部卒業、同大大学院文学研究科博士課程単位取得退学。プロレタリア文学を研究の中心テーマ、座標軸のひとつに据え、ユニークな文芸評論を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パリスお布団
1
小川未明は童話作家だとずっと思っていた自分が恥ずかしいわ!これが本当の「赤い鳥」じゃないのよ!(大真面目)そんな大発見もありとにかく読んで良かった。これ1冊で17冊のプロレタリア文学を読んだ気になれるしね(青空文庫収録作が多いのもありがたい)。 説明に反復重複がとにかく多いので、そこシュッとしたらいいのにと思うけど、でもね、それは血の滲んだ文学を評論し推すために必要な情熱の発露というものだろうね。胸に響いたぜ。 「戦争に反対し、戦争を明視するためには、銃剣の鉾先を一八〇度回転させる必要がある。」2018/02/25
悪読の栄え
0
プロレタリア文学と聞いて、主義主張が前面に出て芸術的・文学的価値に乏しいと思った人はぜひこれを読んでほしい。紹介されているプロ文を読みたくなること請け合いである。2021/11/24