内容説明
1970年頃、梅棹忠夫が構想し、ついに完成させられなかった書物がある。そこには、文明学者・梅棹が想定する“人類の未来”が描かれるはずであった。残された当時の資料、対談記録を現代の目で読みとき、幻の著作の全貌に迫る。
目次
第1部 梅棹忠夫の残した「人類の未来」(『人類の未来』目次案とこざね;梅棹忠夫の残した『人類の未来』)
第2部 梅棹忠夫の見つめていた未来(人間の未来を語る;どうなる・どうする―未来学誕生;なぜ未来を考えるのか;地球時代を考える―SF化する科学文明;地球文明―二〇〇〇年の座標)
第3部 「人類の未来」に迫る(まだ、間に合う―梅棹忠夫の「未完の章」を「未来智」につなぐ;「貝食う会」の五人;梅棹忠夫の未来研究―教祖か予言者か祭司か?;「はかなさ」の感受性へ―梅棹忠夫の「人類の未来」論に即して;科学で価値を語れるか―梅棹忠夫に見る人類の未来)
著者等紹介
梅棹忠夫[ウメサオタダオ]
1920年京都市うまれ。京都大学理学部卒業。理学博士。京都大学教授、国立民族学博物館の初代館長をへて、1993年から同館顧問。専攻は民族学、比較文明学。世界各地の探検や調査をもとに、幅ひろく文明論を展開した。文化勲章受章。2010年没
小長谷有紀[コナガヤユキ]
1957年生まれ。国立民族学博物館教授。京都大学大学院文学研究博士後期課程単位取得後退学。専門は文化人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かりん
5
5:崇めるだけではなく、それを乗り越えて未来を築こうという意志が感じられた。私もそろそろ、そういう視点が必要かな…。■大創造せずに小創造でやっていけるものだけをつかって、やりくりでいこうという傾向。歴史的なもの、伝統的なものがスプリング・ボードにならないで、無色透明なところで創造性は発揮できるものでしょうか。ずるずるべったり。だれがどのようにして目的をつくるか。多元連立高次方程式。一見有用ではないものも、うまく取り入れていく必要がある。それが私の人生観です。もう、真っ暗(笑)。日本の強み=近代的な合理性。2012/01/09
はるまき
1
人類の将来を考えるならサイボーグになってでも生き延びてほしい 思わずはっとさせられた。 対談の年月日と内容とをみて驚いた。全く古さを感じない内容。
ハチアカデミー
1
B 河出書房がかつて刊行し、今なお文庫として判を重ねている『世界の歴史』の最終巻となる予定であった「人類の未来」を、残された目次と構成案、対談録、そして梅棹に関係した・関心を持った研究者たちの論考によって再現せんと試みた一冊。巻頭の目次と「こざね」とよばれるアイデアメモを眺め、そこに書かれたであろう論考を考えるだけでも十分楽しめた。宗教の終焉と、それに変わる人間の行動を制御するものを見いだせなかったことが、この著作が書かれなかった最大の原因であり、それは「英知」という言葉をヒントに僕らが考えるべき課題。2012/01/22
マウンテンゴリラ
0
現代社会において人類の未来を考えるとき、やはりテクノロジーの問題を考えないわけにはゆかない。特に、3.11の震災と原発事故を目の当たりにした日本人にとって文明論としても深刻であり、また、日常の生活者としても日本経済を支えてきたテクノロジーが諸外国の攻勢により危機に立たされているといったことからも深刻な問題である。そのようなことも含め、本書を通じて我々は、信じるべき未来を描くこと(あるいは信じるべき未来などないといった覚悟をもって生きることであるかもしれない)をもっと真剣に考えなければならないと感じた。2012/12/22