内容説明
魏晋南北朝時代は秦漢統一帝国と隋唐統一帝国の中間に位置する。政治的に複数の政権が並立する分裂の時代ではあるが、そこには新しい動きが様々な点で生まれ、成長して行き、隋唐時代に繋がって行く。それら新しい動きを「政治・人物」、「思想・文化」、「国都・都城」、「出土資料」の四つの側面から捉え、魏晋南北朝史研究の「いま」を分かりやすく解説して、当該時代の研究者にも理解され、興味を持ってもらえる一冊としたい。
目次
1 政治・人物(曹丕―三分された日輪の時代;晋恵帝賈皇后の実像 ほか)
2 思想・文化(魏晋期の儒教;南北朝の雅楽整備における『周礼』の新解釈について ほか)
3 国都・都城(〓(ぎょう)城に見る都城制の転換
建康とその都市空間 ほか)
4 出土資料から見た新しい世界(竹簡の製作と使用―長沙走馬楼三国呉簡の整理作業で得た知見から;走馬楼呉簡からみる三国呉の郷村把握システム ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
8
北周の武帝の「戦う鮮卑皇帝」としての実像と「天下統一をめざした英主」としての虚像を問題にした「北周武帝の華北統一」、北魏などの墓誌銘で、書丹された筆跡と石刻された筆跡とが一致しないという問題を扱った「書法史における刻法・刻派という新たな視座」が印象に残った。経済史関係の項目を設けなかったという編集方針に、研究者の関心の変化を感じる。2017/09/07
沖縄電鉄社長
2
三国時代以降の中国史に関わる様々な事項を、最新の研究によって知ることができる本。2017/11/08
さとう
1
晋書は唐太宗によって編纂指示がなされた。その筆によって唐と言う国をどう正統足らしめるか、という意図を見出すのも一つの面白さなのではないか。その基本的視座を、この本からもらったように思う。 一方この本において、北魏孝文帝(元宏)の存在感はすさまじく大きい。孝文は「十六国春秋」を編み、北魏以前の胡族国家を「十六国」にねじ込んだ。晋書の記述は、大いにそれが下敷きとなっているからである。 まぁ、理解が追い付かない部分もあったので完全に読めてはいないんですがw
Teo
0
いやはや、本当にこの魏晋南北朝史に関する専門家の人達による現在の研究状況の内容で、ほとんどのテーマが専門外から見たら「えー、そう言う分野ですか?」と言うのが多い。私としてはこの中では各王朝がどう正統性を担保しようとしていたのかと言うのが興味があった。一方で発掘竹簡は・・・すみません。 2018/01/01