内容説明
多様な異性装の世界―衣服は身分や男女差を可視化できる故に、国家や社会による規制の対象とされることが多かった。異性装はいかなる社会的・文化的背景のもとで行われてきたのか。日本とアジアを中心に、ヨーロッパ、アフリカなど諸国の異性装の事例を歴史・服飾・美術・ジェンダーなどの側面から照射し、女神の帰依・男巫の儀礼から同性愛・トランスジェンダーまで、多様な女装・男装の実体や異性装禁止命令の変遷を明らかにする。
目次
1 日本(平安朝の異性装―東豎子を中心に;中世芸能の異性装;コラム 軍記絵のなかの異性装;宮廷物語における異性装;日本近世における異性装の特徴とジェンダー;女装秘密結社「富貴クラブ」の実像;女性装を通じた考察)
2 アジア(唐代宮女「男装」再考;異性装のヒロイン―花木蘭と祝英台;韓国の男巫の異性装とその歴史的背景;衣と性の規範に抗う「異装」―インド、グジャラート州におけるヒジュラとしての生き方について;タイ近代服飾史にみるジェンダー;ブギス族におけるトランスジェンダー―ビッスとチャラバイ)
3 ヨーロッパ・アフリカ(初期ビザンツの男装女性聖人―揺れるジェンダー規範;ヨーロッパ中世史における異性装;英国近世における異性装―女性によるダブレット着用の諸相;十九世紀フランスのモードと性差;異性装の過去と現在―アフリカの事例)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はら坊
2
図書館本。 様々な時代、様々な地域における異性装の様相および、その社会的背景を考察した論集。 「アジア遊学」シリーズのうちの一巻であるため、日本とアジアの事例が中心であるものの、ビザンツ、中世ドイツ、近世イギリス、近代フランス、アフリカの事例に関する論考も収録されている。 著者のラインナップについても、歴史学、文学、文化人類学など学際的であり、多様な事例を多様な視点から分析を試みている。 2800円、300頁弱の本とは思えぬ濃い内容の良書であった。2020/07/28
カコ
0
松尾 量子「英国近世における異性装 : 女性によるダブレット着用の諸相」は手元に置いて読みたい。他の論考は入手済。 2024/12/16
Ryukeion
0
初期ビザンツの男装女性聖人、めちゃおもろい2022/04/24
ふじか
0
日本に30年ほど前まで存在した女装秘密結社の富貴クラブの項が特に面白かった。2019/02/17