内容説明
ジェンダーとは性別をどのように社会が意味づけてきたかという文化構築的なものであるが、ジェンダーから中国史を論じてきたものは、これまであまりなかった。中国社会におけるジェンダーのあり方―社会の基礎とされてきた家族や法の構造から、男性や女性の日々の服装やふるまい方のあるべき姿と実態、さらには同性愛者や宦官などのセクシャル・マイノリティーがどのように存在していたのかに至るまで―を理解することは、中国の文化そのものを理解する上で欠かせない視点である。中国とその「周縁」社会におけるジェンダーの理念と表象、規範と現実の多様で流動的な情況を、様々な分野から論じる。
目次
1 中国的家族の変遷
2 「悪女」の作られ方
3 「武」の表象とエスニシティの表象
4 規範の内外、変容する規範
5 「周縁」への伝播―儒教的家族秩序の虚実
書評 スーザン・マン著『性からよむ中国史 男女隔離・纏足・同性愛』(小浜正子/リンダ・グローブ監訳、秋山洋子/板橋暁子/大橋史恵訳、平凡社)
感想・レビュー
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すいか
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中国史に対するジェンダーの視点から様々なアプローチが試みられている、その成果がトピック別に紹介されている。滋賀秀三『中国家族法の原理』批判について墓制の面から滋賀「原理」を明快に否定する佐々木論文の切り口が鮮やか。宦官を多様なLGBT的な観点から捉えようとする猪原コラムが興味深い。「悪女か女傑か」という好悪混じりの評価に囚われず、儀礼制度面から則天武后を冷静に分析した金子論文が個人的関心から勉強になった。武周政権とその後の唐朝との関係や評価という問題の重要性に目を開かされた。2019/09/06