内容説明
「実学」という用語の細かな定義に拘らず、「学問」「学び」という緩やかな括りで、東アジア世界において「知」の営みがいかに展開されてきたのか、またそれを将来に向けてどのように継承・発展させてゆくかを検証。日中韓の共同研究により、近代以降の西洋的な学問知から抜け落ちた、東洋の「知」と学びの伝統を問い直す。
目次
始めに心ありき―実心実学の認識論
中国古代の「知」の性質と学問
儒教文化圏における知の進展と退縮
フクシマと「倫理」の再興―熊沢蕃山とハイデガーにおける老荘的な脱Ge‐stellへの道
日本近世の琴学受容に見る「知」の動向―江戸後期の村井琴山を中心に
渡辺崋山の学問観と教育思想―主に漢籍から得た学識と小関三英提供の蘭学情報との関連・異同について
実生活の学問と芸術―与謝野晶子にみる
中国の反知性主義思想の淵源と成因についての考察―先秦時期の儒家・道家の知識論思想を基礎として
中国思想の“徳性の知”を論ず
実学の視野からみる儒学知行学説
「百工の知」と「士大夫の知」を論ず
「知の問題」と「哲学の合法性」との関連―東アジアの「近代知」の反省にあるべき一視点について
一七一一年の辛卯通信使行と加賀藩の学術交流―加賀藩文士・伊藤薪野を中心に
十八世紀郷村知識人の自我構成―存齋魏伯珪の場合
朝鮮後期の女性性と「知」に関する問題―文学の問題を中心に
儒教的な「教育・教化」論と「実践知」