内容説明
世界で最も文字数の少ない文学「俳句」、五言・七言の句より構成される「漢詩」、そして三章六句の叙事詩「時調(シジョ)」…東アジアには古来、短い字数でかつ雄大な空間、悠久の時間をとらえる文学のかたちがあった。日中韓そして古代から現代へと、空間・時間を超えて共有される、研ぎ澄まされた言葉が織りなす短詩形文学の小宇宙を垣間見る。
目次
“みじかいうた”に咲く宇宙
雪・月・花のとき君をおもう―平安京、白楽天詩ことはじめ
漢詩の歌枕―詩跡
名作の楽しみ方―王之渙の「鸛鵲樓を登る」詩について
王維のクオリアを探る―「〓(もう)川集」にみる“光と音の交錯する世界”
中唐の名句名言―人生の四季
清風明月人の管する無し
日本人が読んだ陸游―『増続陸放翁詩選』所収の絶句について
唐宋詞の名句―『草堂詩余』から
藤原宇合の『論語』受容―『懐風藻』所載藤原宇合詩序二篇を手がかりとして〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akuragitatata
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和歌、漢詩、俳句から韓国の時調、プレカリアート川柳などにいたるまで、いろいろな短詩を紹介する特集号。雑多な論考が並んでいるのもまた気持ちよい多様性がある。一番面白かったのは時調に関する論考でした。情熱的に直接的に愛を詠う時調はK-popの歌詞とも共通する直裁性を持っているという話。これは和歌が「忍恋」を基盤として、はっきり感情を詠わないのと、日本のバラードやフォークが失恋とか逢いたくて震えたりするのとかともパラレルな関係があるのかもしれない。感情の歴史性というのは、意外と根深いものがあるのかもしれない。2017/08/01
よしみず
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どの話も文章が軽くて読みやすい タガログ語(フィリピン)の俳句、初めて聞いたけど面白い あと漢詩に歌枕的なテクニカルタームがない理由がなんとなく分かったけどスッキリしなかった 詩跡の本に当たればいいのかな2017/01/31
山がち
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仮名詩という試みがあったということが、個人的には最も面白かった。確かに、五音や七音を基盤にしているところなども含めて、新体詩的につながるようなものを感じる。また、韻を踏むという試みがあったことも面白いが、江戸時代には韻を踏もうとする試みがあると他の本で読んだが、別の流れなのだろうか。漢詩というものの形式やその他、深い教養をもとにそれを日本語で表現してしまおうというのは、和漢両方の詩、歌への造詣が深くなければできないことだろう。また、タガログ語の俳句論は、卒業論文の要旨らしく、素直に尊敬せずにはいられない。2013/12/21
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- 和書
- 六助くん 〈5〉