内容説明
南方熊楠が生涯をかけて凝視しつづけたのは森羅万象の生命力のもつ不可思議さであった。幼時からアジアを包みこむ視野をもつ『和漢三才図会』の天地に分け入りさらに西方世界にも開かれた唐代中国の『酉陽雑俎』を縦横に読みとき古代インドの苦悩を塗りこめた大蔵経の行間を鋭く切り裂いてみせそれらに通底して持続する男女の営みにも視線をそそいだ。アメリカ、イギリスでの十数年の放浪と、西洋の学問への研鑽をへながらも厖大な説話を集積した漢字世界の書物に晩年まで没頭していた南方熊楠―その説話学の広野に足を踏み入れる探求者に捧げる一冊。
目次
第1部 説話学への道(南方熊楠の説話研究;仏教説話との出会い;『酉陽雑俎』の世界;吉祥天女への恋―晩年の読書ノートから)
第2部 説話研究の周辺(柳田国男と南方熊楠―往復書簡おぼえがき;熊楠の親しんだ中国の古籍;「漢文」から中国書の読解へ;熊楠にとっての中国)
第3部 資料篇(南方熊楠引用中国書一覧;南方熊楠引用大蔵経一覧)
附篇 回想短章
著者等紹介
飯倉照平[イイクラショウヘイ]
1934年千葉県生まれ。東京都立大学人文学部文学科(中国文学専攻)卒。出版社勤務ののち、神戸大学文学部教員、雑誌『中国』編集部、平凡社版『南方熊楠全集』校訂者ののち、1974~97年、都立大教員。南方熊楠邸の資料整理に協力。2004年南方熊楠特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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