内容説明
内藤湖南をいかに受容・継承していくか―日本近代史と中国古代史の視点を交差させることで、内藤の思想形成過程を思想史的・史学史的に検討。アジア世界が混迷するいま、「東洋史の大家」の中国観・文明観の可能性と限界を再定位する。
目次
第1部 内藤史学の形成(文明中心移動説の形成;内藤湖南における二つの「近代」と「政治」;近代日本における「東洋史」の形成と湖南の中国史;内藤湖南の朝鮮観と「東洋史」―アジア認識の構造化のために)
第2部 内藤神話への問い(史学の黙示録―『新支那論』ノート;戦前期東洋史学における湖南学説の受容をめぐって;朝鮮をぬきにして「支那(学)」は語れるか―内藤湖南の「日本文化史」叙述にみられる朝鮮認識をめぐって)
国家と社会をめぐる思想史的素描
著者等紹介
山田智[ヤマダサトシ]
1971年生まれ。静岡大学教育学部准教授。専修大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は中国古代史・史学史
黒川みどり[クロカワミドリ]
静岡大学教育学部教授。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学、博士(文学)。専門は日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Erina Oka
1
同じく京都帝大であっても、「世界史の哲学」なんかのいわゆる京都学派と、東洋史の連中との関係はどうだったんだろうか。調べてみよう。。2013/12/30
かほ
0
黒川みどりによる湖南の同時代史的な分析が見事だ。湖南の「文化中心移動説」が中国侵略の正当化と増渕らから批判されたのを受け、湖南の人となりや当時の日本の状態を大いに考慮しながらこの説を徹底的に読み解いた。ダーウィンの進化論を受けた社会進化論の広まりが明治の思想家たちに大きく影響を与えていることは、なかなか気付きづらいが重要な事実だと感じた。過去の言説を現代の文脈で語ろうとする際の、同時代性の意識がいかに重要であるかを考えさせられた。2018/07/22