内容説明
日本文壇の中心にいた“全く文学者らしくない”人物。文藝春秋社創始者であり、『恩讐の彼方に』『藤十郎の恋』『真珠夫人』などで大衆社会、都市文化を描きつづけた菊池寛。時代の同伴者ともいうべきその人生を見ていくことは、日本の近代の確立と崩壊を見ていくことに他ならない。決して自分の中に閉じこもることなく、世相の真ん中にいたがゆえに、常に時代の変化に晒されつづける菊池文学を、現代社会を考える意味で再考する。
目次
評伝 菊池寛(幼少年時代;一高時代;京都時代;新聞記者時代;新進作家時代;通俗小説と「文藝春秋」創刊;文壇の大御所で大実業家;友人の証言で綴る菊池寛)
作品案内(「身投げ救助業」;戯曲「屋上の狂人」一幕物;戯曲「父帰る」一幕物;「恩讐の彼方に」;「忠直卿行状記」;小説「藤十郎の恋」;「入れ札」;「真珠婦人」;「受難華」;「三家庭」;「東京行進曲」;「貞操問答」)
著者等紹介
小林和子[コバヤシカズコ]
1986年筑波大学大学院博士課程文芸言語研究科日本文学専攻単位取得満期退学。文学修士。茨城女子短期大学教授。筑波大学、東京理科大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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葉菜枝
2
孤独な京都大学での学生時代、新聞記者と作家の二足のわらじの生活、新進作家から大流行作家へ、そして実業家としての成功、その過程が詳しく書かれていて、波乱の人生を運と才能でくぐり抜けた半生がよくわかった。都会っ子で秀才型、繊細な芥川龍之介と、田舎者でバンカラでたくましい菊池寛、対照的な気質ながら、お互いの才能を認め合った親友の交流が素晴らしいと思った。菊池寛の魅力、菊池文学の魅力がよくわかる良書だった。2015/12/11
miyagi
0
評伝、伝記の類かな? リアリストかつ心の温かい、すてきなカンキクチをみた。 繊細な芥川アッピルもつよくてなんか笑いが止まらん…… 他特筆すべき事項 ・カフー先生に菊地と字を間違えられてガチギレ ・社長やっても文筆業は怠らない文士の鑑 ・どんなに遊んでも家庭人、職業婦人にやさしい、フェミニストな一面も バブ…………2017/12/15
利部
0
菊池寛の人となりについて知るため最初に読んだ本。個々の事件についての記述はあっさりめだったが、初学者にはちょうど良かった。当時の時代背景も適宜解説されていたのがありがたい。菊池寛の経歴や価値観を知るにはうってつけだったように思う。