内容説明
混迷する戦局のなか、昇一は海軍兵学校に入学し、故郷の町を離れる。春子は兄に会いたくて広島までやってくるが…。四国の遍路みちを舞台に、間違いない昭和の息づかい、まぎれのない昭和のたたずまいを伝える大作、完結篇。
著者等紹介
早坂暁[ハヤサカアキラ]
1929年、愛媛県松山市生まれ。作家。本名、富田祥資。日本大学芸術学部演劇科卒業後、業界紙編集長、出版事業に従事しながらテレビシナリオを書き始める。以後、小説、映画シナリオ、戯曲、舞台演出、ドキュメンタリー製作を手がける。新田次郎文学賞、講談社エッセイ賞、放送文化基金賞、芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、芸術祭大賞、モンテカルロ国際テレビ祭脚本賞、放送文化賞ほか受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ayjoe
1
脚本家早坂暁の体験をもとにした作品。 昔、母と一緒にテレビで見ていて 当時中学生ながら今でも印象に残っているドラマの原作。 大平洋戦争末期の愛媛県松山が舞台。 だいすきなマンガ「この世界の片隅に」は対岸の広島県呉市なので 二つの作品には重なる舞台設定があり、自分なりの興味を持ち読みました。 江田島の海軍兵学校に送り出す息子を案じる母の気持ちは 中学生当時も切なく涙したけれど、自分が母親になった今の方が胸に迫りました。2015/04/15
wasabi
1
ここに改めて、後にも先にも長い日本の歴史の中で、最大の犠牲を伴ったことになるであろう時代を学んだ。2010/06/11
KAZE2013
1
1929年生まれの早坂暁が赤旗日曜版に連載した小説。空海がひらいた四国遍路道。遍路道沿いの風早町に生きる人々の暮らしから、日中戦争から太平洋戦争、敗戦までを描く。小説としてのふくらみはあまりなく、共産党的、戦後民主主義的な歴史観を書き綴ったもの。このように戦争に批判的な主人公の存在は戦後の歴史観からの造形であって、無理がある。2013/04/30
tecchan
0
富屋勧商場の家族や関わりのある人々の昭和20年敗戦までを描く完結篇。富井家の家族も否応なく戦争に人生を奪われていく。地方の一家族の目から見た日本の15年にわたる戦争が見事に描かれている。「昭和とはどんな眺めぞ花へんろ」2017/05/16
suntalk
0
シリーズ第3巻最終話。先の戦争、広島、長崎に原爆が投下され、終戦するまでが描かれる。自然災害にしても典型的な人災である戦争にしても、いつも悲惨な目にあうのは無辜の民。共産主義の影響を受けた仮名井靴院長が最後まで日本軍の礼賛者であったことからも当時の庶民の様子がうかがわれる。圧倒的な経済の格差、資源の格差がある中で一億玉砕を覚悟するところまで突き進んでしまう日本、軍需施設のみならず、東京、大阪ほか主要都市への空襲、広島、長崎への原爆投下するアメリカの無道。今の日本の状況と照らし合わせいろいろ考えさせられる。2024/03/10