内容説明
同窓会のゴルフコンペ中、雷鳴とともに失踪した石原と高津。気がついた彼らを待っていたのは特高による尋問だった。平成に特高などいるわけがない―彼らは時を超えてしまったのである。あたかも日本は軍部の独走が始まり、国際的に孤立する時期であった。意識の戻らぬ高津を気にかけながらも、一人石原はこの時代、昭和八年で生き残る術を考え始めた。彼は戦史マニアであり、高津は物理学の博士である。二人の知識を武器にして生き抜くしかないと判断した石原は自分達の状況を理解できる人間と接触すべく、さっそく行動を開始した。当時の工業力、技術水準をはじめ資源調達や人的動員に至るまで、膨大なデータを駆使してのシミュレーション戦記が導く日本の行方は…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
19
太平洋戦争を舞台にしたタイムトラベルの娯楽作品には、「ファイナル・カウントダウン」、「紺碧の艦隊」、「ジパング」等が日米双方にある。この作品では、戦史マニアと物理学者が歴史改変に挑む。今ある私たちの世界は、無数の可能性から努力を積み重ねて選択肢として形のあるものとし、さらに勇気をもって意思決定したもの。その過程にある小さな歯車が回り損ねても違った結果になっていた。歴史は繰り返さないが韻を踏む。似たことは今でもどこかで起こっている。実験で再現することはできないだけに頭の中でシミュレートすることに意味がある。2017/10/24