出版社内容情報
自殺未遂、出版差し止め裁判、子どもの虐待問題…壮絶な半生を送ってきた柳美里は、2015年4月の福島県南相馬への移住で何を見つけたのか?未来を生きるため、過ぎ去らない過去を振り返りながら考える、人生において必要のないこととは?
内容説明
どんな相手でも「対話」することはできる。計画通りの人生はつまらない。稼ぐために「仕事」があるのではない。「家族のようなもの」を作る。「死」によって生まれた人間の縁。“南相馬在住作家”が語る、48年間の後悔―。
目次
第1章 後悔とは何か(「美」に目を向けるということ;目を逸らしても、現実は在る ほか)
第2章 お金(原発のそばで暮らすのは怖いのか;苦しみから遠い言葉があふれいる ほか)
第3章 家族(「死」によって生まれた人間の縁;同時代を生きているという奇跡 ほか)
第4章 死(最後まで自分に「余地」を残しておく;老いも人生の一部 ほか)
著者等紹介
柳美里[ユウミリ]
1968年生まれ。高校中退後、東由多加率いる「東京キッドブラザース」に入団。役者、演出助手を経て、86年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。93年『魚の祭』で岸田國士戯曲賞を最年少で受賞。97年、『家族シネマ』で芥川賞を受賞。著書に『フルハウス』(泉鏡花文学賞、野間文芸新人賞)、『ゴールドラッシュ』(木山捷平文学賞)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayu
61
1万円選書。柳さんがこれまでの半生を振り返り、考えてきたことや今取り組んでいることを率直な言葉で綴っている。感情の起伏の激しさに驚いたところもあったけど、戻りたい過去はないと言い切る潔さや、被災者ではなくても知ることはできると南相馬に移住する行動力やまっすぐさなど惹かれるところもたくさんあった。向いていない多くのことを諦め残された唯一のものをやればいい、それが柳さんとっては書くこと。うまくいかないとくよくよ後悔しがちな私には、励まされる言葉だった。2020/08/23
ネギっ子gen
60
【「後悔」から目を逸らさなかった――それは、わたしが曲がりなりにも作家生活を続けて来られた理由のひとつかもしれません】南相馬転居は批判され芥川作家の「人生の転落」と揶揄された、と著者は記した後、<わたしは、南相馬での生活に不自由を感じたことはありません。むしろ移住してから、自分の人生に「必要なこと」が見えてきた。同時に、自分の人生に「必要のないこと」も見えてきた>と。この作家、今までぽつぽつと読んできたが、熱心な読者ではなかった。ここらで本腰を入れて読めねば、と。まずは、『命』などの4部作からかなぁ~。⇒2023/04/23
アマニョッキ
58
一万円選書3冊目。勝手にエキセントリックな印象を持っていて、読まず嫌いだった柳さんですが、これを読んでみて自分に似ている部分がたくさんあることに気づきました。タイムマシンがあって何歳の自分に戻りたいかと問われても、どこの自分にも戻りたくないこと。老いが嫌ではないこと。「死」の捉え方。この出会いを機に柳さんの小説を手に取ってみたいと思っています。もしおすすめがあれば教えて下さい。2020/08/10
nonpono
50
小高駅にいる。文庫本コーナーがあった。神田駅を思い出した。わたしはそこで沢木耕太郎の「深夜特急」に出会い、「乗り合いバス」に乗り海外を旅したい、そんなテーマを追うことになる。「いくつものことに挫折し、そのたびに明確に断念してきた。「何に向いているのか」ではなく、「何に向いていないのか」を羅針盤にしてきたのです。」、48歳のわたしだから噛み砕ける言葉か。一緒に暮らし看取った東さんへの悔い、わたしも亡くなったある人が浮かんできた。地震のとき一番にわたしの電話を鳴らした人。くしゃくしゃな気持ちになり泣いていた。2024/10/10
おたま
44
何故自分がものを書く人間になったのかを振り返った本であり、福島に住むようになって考えたことが書かれている本でもある。子どもの頃から、荒れていた家庭の中に、そして学校に自分の居場所を見出すことができず、10代の日々は精神的に不安定であったようだ。そこから演劇に出会い、脚本を書くことからさらに小説へと進んでいく。「何に向いているか」ではなく、「何に向いていないのか」を羅針盤にしてきたという生き方の、残された唯一のものが「書くこと」だった。柳美里の小説も読んでみたくなった。2022/03/06