内容説明
日本のカジノ導入議論は、これまで「別の土俵からの空中戦」であった。つまり、カジノ推進派は地方再生・観光客増加などのメリットだけを強調し、反対派はギャンブル依存症問題・治安悪化などのデメリットだけを主張してきたわけだ。では、そもそも推進派が主張する「カジノで日本経済が成長する」は真実なのだろうか?本書では、「ゼロサム」「カニバリゼーション」「ジャンケット」「コンプ」といったキーワードから、IR型カジノの危うさを明らかにしていく。カジノの危険性と、そこに残された可能性から、カジノが日本を幸福にするのかを問い直す。
目次
第1章 カジノ推進論には反論できる
第2章 カジノ構想は「成長戦略」にならない
第3章 地方を蝕むカジノ
第4章 アメリカのカジノに未来はない
第5章 アジアは「未開拓地」か
第6章 ギャンブル大国・日本の患者
第7章 カジノはコントロールできない
著者等紹介
鳥畑与一[トリハタヨイチ]
1958年生まれ。静岡大学人文社会科学部経済学科教授。大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了。専門は国際金融論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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活字スキー
18
個人的に、逆境やリスクに対し果敢に挑むタフな冒険心やクレバーな知性と技術を備えた人間にシビれたり憧れる気持ちはある。しかし、社会人としての一般論、或いは社会全体として志向すべき在り方はまた別の話。カジノ産業は未来を産み出さない。産み出せない。どう取り繕ったところで、ギャンブルで大きな収益をあげるという事はより多くの人間を「負かす」事であり、多数の人間の不幸を一部の人間にとっての利益とする事なのだから。マカオのような、成功している(とされる)カジノが日本でも再現出来るとも、すべきだとも私は思えなかった。2015/11/07
skunk_c
3
国際金融の専門家が昨年4月から取り組んだカジノ誘致問題に対する研究。カジノの収益は生産的なものでなく、客の「負け」と「所場代」によるものであること、IR型カジノが「コンプ」というサーヴィスにより客を引きつけるが、そのサーヴィス額が大きく収益率が低下していること、さらにギャンブル依存症の問題点を指摘し、また、成功しているマカオやシンガポールとの経済条件の違いから、日本で同様の成功が得られる保証はないとしている。データの取り上げ方に少し「操作」を感じるが、推進派の操作に比べれば遙かに良心的。横浜市長必読の書。2015/05/29
Kaori Sato
1
話題のIR法案のデタラメに切り込んだ本。著者は経済学者で、専門は国際金融論。カジノは依存症対策のことが大きく報じられてるけど、もちろん依存症対策は重要なのだけど、それ以前に、「カジノで経済活性化」が幻想だと説く。政府の試算するIR投資の収益は、「毎年10万円負ける客を1000万人必要とする」規模だそうだ。外国人観光客だけをターゲットにしていてはとても回収できず、地域住民を「依存症」にしないと成り立たない試算。カジノができれば街も衰退する。あーあ、なにやってんだ政権よ。2017/01/16
ミニジロー
0
カジノを国の経済成長に結びつけることへの違和感を解き明かしてくれる。 統合型リゾート施設というオブラートに包み、カジノでお金を吸い上げるビジネスモデルは長期的に地域経済をも衰退させるという。 ギャンブル自体は人間の営みの中にあってもいいのだろうが、やはり裏社会で後ろめたく付き合うのが本来では?そして、依存症については、本人を追い込むのでなく、社会が許容するのが大事では?なんか反対になっているような気がする。2016/12/10
Naota_t
0
★3.3/カジノに対するポジションは、ネガティブで分かりやすい。カジノのビジネスモデルは、全てを無くすまで賭けに熱中させる多くの顧客を増やすしかない。よって、地元住民向けには成り立たず、外国人にフォーカスするには継続的に多くの集客が必要で日本では不可能。IRを造る上でもカニバリが大きく意味がない。結局、IR政策は、カジノを導入して賄賂をもらう議員の隠れ蓑でしかないのだろう。必ず客が負ける点(期待値>0)では、パチンコ、競馬も同様だ。カジノを議論する前に、それらの公益ギャンブル規制を見直す必要があると思う。2022/05/26